故人の預貯金も遺産分割対象に 最高裁が判例変更
最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は19日、裁判所での審判で相続の取り分を決める「遺産分割」の対象に預貯金は含まないとしてきた判例を変更した。遺族間で争われた審判の決定で、「預貯金は遺産分割の対象に含む」とする初判断を示した。相続の話し合いや家庭裁判所での調停では預貯金を含めて配分を決めるケースが多く、こうした実態に沿う形に見直した。
裁判官15人の全員一致の結論。過去の判例は、預貯金は不動産や株式など他の財産とは関係なく、法定相続の割合に応じて相続人に振り分けるとしてきた。最近では2004年の最高裁判決が「預貯金は法定相続分に応じて当然に分割される」としている。
今回、大法廷は決定理由で「遺産分割は相続人同士の実質的な公平を図るものであり、できる限り幅広い財産を対象とするのが望ましい」と指摘。「預貯金は遺産分割の対象とするのが相当だ」と結論づけた。
新たな判例に従うと、「兄は土地と建物、弟は預金全額」といった柔軟な分配がしやすくなる。
特定の遺族に多額の生前贈与があった場合の不公平な遺産分割の解消にもつながる。預金約4千万円の相続をめぐって遺族2人が争った今回の審判でも、1人が故人から生前に5千万円を超える贈与を受けていた。このため、もう1人の女性が「生前贈与を考慮せず、法定相続分に従って預金を2分の1(約2千万円)ずつ分けるのは不公平」と主張していた。
一、二審は過去の判例に沿って女性の主張を退けたが、大法廷は二審の決定を破棄。預金の分け方などを見直すために、審理を二審・大阪高裁に差し戻す決定をした。