2018年10月20日(土)

新国立、迫る契約期限 国とゼネコンの調整難航
屋根の巨大アーチ、斬新ゆえ「難工事」

2015/6/22付
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2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備事業を巡り、政府に決断の時が迫っている。斬新なデザインは「日本の先進性を発信できる」として、五輪招致活動のシンボルとなったが、当初から技術的な難しさとコストが懸念されていた。工期の制約があるなか、膨らむ整備費をどこまで抑えられるか。調整は大詰めを迎えている。

流線形の屋根を走る2本の「キールアーチ」。鉄製で長さ約370メートル。新国立の最大の特徴で、論争の火種でもある。

■白紙化を否定

「アーチをやめるべきだ。屋根は客席を覆う部分で十分」。世界的な建築家、槙文彦氏らのグループは今月、整備費や工期を大幅に圧縮できる設計案を提示。槙氏らは、コスト高と工期の長期化を招くアーチの撤去を求めた。

下村博文・文部科学相は「白紙化は国際的な信用問題になる」と設計のやり直しを否定。文科省の担当者も「19年9月のラグビーワールドカップ前の同年3月の完成に間に合わない」とする。

■頓挫した例も

議論を呼ぶデザインを手掛けたイラク出身の女性建築家、ザハ・ハディド氏は「建築界のノーベル賞」ともいわれる米プリツカー賞の受賞者。建築ジャーナリストの細野透氏は「前衛的な作風で強烈な印象を与える一方、高い技術とコストが求められる。資金不足で頓挫したデザインも少なくない」と話す。

巨大なキールアーチはパーツに分けて工場で製作し、現場でつなぎ合わせる工法が想定される。アーチを支える強固な土台も必要だ。1級建築士の資格を持つある大手ゼネコン社員からは「難工事は明らか。施工業者としてはやりたくない」との声も漏れる。

新国立競技場の運営主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)は12年、国際コンクールで新競技場のデザインを募集した際、整備費の見込み額を過去の五輪メーン会場を大きく上回る1300億円とした。

ところが、応募46作品の中から採用された「ザハ案」だと、3千億円以上になることが13年に東京五輪の開催が決定した後に判明。JSCは14年5月、総面積を25%削減するなどし、1625億円にまで圧縮する基本設計案を明らかにした。

だが、資材や人件費が高騰。消費税率引き上げなどを受け、施工業者に内定しているゼネコン側が示した見積もりは再び3千億円を超えた。

予定通り完成させるには、7月初旬に工事契約し、10月には着工しなければならない。JSCや文科省などは開閉式屋根の設置を五輪後に先送りし、常設席も8万席から6万5千席に削減することを表明。整備費を2500億円程度に抑える案を軸に、月内合意を目指してゼネコン側と協議を続けている。

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