2018年11月19日(月)

石碑に学ぶ水害の歴史 土砂災害3年、広島大が調査
「減災の足がかりに」 38基の文面解析

2017/8/19 10:33
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77人が犠牲になった大規模土砂災害が起きた広島県で、過去の水害の被害状況が刻まれた石碑の調査が進んでいる。教訓を伝えようと広島大の研究チームが難解な漢文を含む約40基を解析、忘れ去られつつある惨事に光を当てた。土砂災害の発生から20日で3年。各地で豪雨災害が相次ぐ中、関係者は「歴史に学び、備えに生かすことが大切」と訴えている。

過去の水害を伝承する石碑を後世に伝える小山さん(広島市安芸区)

過去の水害を伝承する石碑を後世に伝える小山さん(広島市安芸区)

「一気に水が押し寄せ、岩石が折り重なり、土砂が田畑に堆積し……」。広島市安芸区の住宅街の一角にある高さ約4メートルの石碑は1907年の豪雨で付近の川が氾濫し、64人が死亡した水害を伝える。「予測不可能な災害を後世に伝えるべきだ」という住民らの希望で、県が建てたという。

漢文で刻まれているため、内容を知る近隣住民は少ない。同区は2014年8月に発生した豪雨で人的被害は免れたものの、当時、広島大の学生で石碑の近くに住む小山耕平さん(24)が「昔の記録が多くあるはずなのに生かされていない」と危惧。「読み解くことで被害を抑えられるのでは」と考え、先輩研究者らと15年夏から調査を始めた。

広島県はこれまで幾度も水害に見舞われ、17年3月末時点での土砂災害警戒区域数の推計は約4万9500カ所と全国で最も多い。小山さんらは各地の図書館で郷土史を読み込んだり、インターネットに掲載された石碑の画像から位置を割り出したりして調べたところ、13市町で計38基が見つかった。

「山林の数百カ所が瞬く間に崩壊した」。広島市東区の「水害碑」には、1926年に4人が死亡した洪水について記されていた。同市安佐南区にある「災害の碑」を調べると、1916年の洪水で当時の村役場の戸籍や帳簿が流失し、復興計画の策定に苦労した様子が浮かび上がった。

漢文の現代語訳などの解説を昨年末にまとめ、広島大学総合博物館(広島県東広島市)のホームページで公開した。市民らにも活動が知られるようになり、「地元の石碑を調べて」という依頼も舞い込むようになった。今年7月までにさらに12基を確認し、現地調査などを進めている。

東日本大震災の被災地、岩手県宮古市では「ここより下に家を建てるな」という石碑に従い、津波被害を免れた集落があった。現在は高校で教壇に立つ小山さんは「郷土に伝わる災害の記録は減災の足がかりになる。子供らへの防災教育に採り入れるなど活用方法を考えたい」と話している。

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