性同一性障害の国内受診者延べ2.2万人 学会公表
心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)で国内の医療機関を受診した人が、2015年末までに延べ約2万2千人に上ったとの調査結果を日本精神神経学会の研究グループがまとめ、札幌市で18日に始まったGID学会総会で公表した。12年末時点の前回調査と比べ、3年で約5割に当たる7千人増加した。実際のGID当事者はさらに多いとの見方が強く、受け皿の整備が求められそうだ。
障害への社会の認知が広がり、当事者の意識も変化したことが増加理由とみられる。当事者は国内に数万人いるとされるが、受診者数で改めて裏付けられた。専門家は「児童、生徒や高齢者を中心に、まだ医療機関を受診できていない人もいる」とし、今後も受診者数が増えると指摘した。
研究グループの針間克己医師らが、GID当事者が受診しているとみられる各地の26医療機関にアンケートを実施。医師がGIDと診断した人数を集計したところ、15年末までに延べ2万2435人だった。14年にも同様の調査を行い、12年末までの受診者数を集計。その際は延べ1万5105人だった。
今回調査で、体が女性で心は男性の受診者が1万4747人だったのに対し、逆のケースは7688人だった。針間氏らは、26医療機関以外で診断を受けた人もいるとみて、国内の当事者数を約2万5千人と推計した。
GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授(生殖医学)は「障害への理解を深め、いじめや差別などの二次被害をなくすためにも、当事者の数を示すことは重要だ」と指摘。行政や医療機関の態勢づくりで、議論を促したいと話した。
GIDの当事者数を巡っては、全国で4万6千人いるとの推計を北海道の大学教授らが13年にまとめている。〔共同〕