2019年2月17日(日)

小泉八雲の英語講義、受講ノート発見 教育者の実像鮮明に

2014/10/18付
保存
共有
印刷
その他

「怪談」などを著した作家の小泉八雲として知られる文学者で日本研究家のラフカディオ・ハーン(1850~1904年)が第五高等中学校(現熊本大)で英語を教えていた際、講義を受けた学生が記したノートが東大文学部英文研究室の書棚で見つかった。100年以上前に優れた英語教育を行った教育者としてのハーンの実像が鮮明に浮かぶ貴重な資料だ。

ハーンは1891年から3年間、五高で英語とラテン語を教えた。ノートは当時、五高生だった黒板勝美(1874~1946年)が講義の内容を英語で筆記したもの。黒板は東京帝大(現東大)の教授を務め、後に日本史学の大家となった。

東京帝大教授で英語学者の市河三喜(1886~1970年)がハーンの没後に関連資料を集めた際、黒板が提供したようだ。他の資料と一緒に長く保管されてきたが、ハーン研究で知られる平川祐弘東大名誉教授(比較文学)が最近、黒板のものと確認した。

ノートの記載からはハーンが実践的な講義をしていたことが分かる。例えば日本人が不得手な否定疑問文について「日本人は質問に含まれる否定や肯定に対して『はい』や『いいえ』と返答するが、それは質問文そのものに対する答である。イギリス人はそうしない。質問文の言葉に対してではなく、事実に対し返答する」(原文は英語)と記されており、分かりやすい説明をしていたことがうかがえる。

また「worship(祈り)」といった宗教上の概念を、日本語の「仏壇」や「宮」という言葉を用いて説明。日本の学生にとって身近な題材を取り上げる工夫もみられる。

ノートの冒頭には、黒板が後年書き込んだ「ラフカヂオ・ヘルン(小泉八雲)氏の口授するところ 今にして これを 読むも 猶 興味津々たるを 覚ゆ」との言葉もある。

平川さんは「ハーンは日本の学生に何が必要かよく分かっており、教えながら日本のことを学ぶ一石二鳥の姿勢があった。明治の外国語教育の水準がいかに高かったかも分かる」と指摘する。

ノートの内容は平川さんが編者となり、福岡市の出版社、弦書房が「ラフカディオ・ハーンの英語クラス」として刊行。講義の特徴を解説する論考やハーンをしのぶ黒板の文章も収録している。

■ ラフカディオ・ハーン ギリシャに生まれ、英仏で教育を受けた後に渡米、新聞記者となる。1890年に来日し、島根県尋常中学校(現松江北高)や熊本第五高等中学校などの教師を経て、日本を海外に紹介する著作を発表するようになった。日本国籍を取得して小泉八雲と名乗り、東京帝国大で英文学の講師などを務めた。

〔共同〕

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報