2019年7月22日(月)

登山道修復、自然に学ぶ 環境重視の工法で男性起業

2016/11/21 11:41
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登山ブームを背景に山に入る人が増え、全国で登山道の崩壊が問題化している。北海道で山岳整備会社を立ち上げた岡崎哲三さん(41)は自然に学び、環境や生態系を重視する工法を提唱、自治体や登山者と共に修復に励む。

「山に傷ができたみたいだ」。10月上旬、大雪山系旭岳につながる登山道を岡崎さんは深刻な表情で見つめた。深いぬかるみ、のり面の崩れ、朽ちた木道――。歩きにくくなった本来の道を避け、登山者が脇を歩くと道幅は広がり、道端に咲く高山植物も消えていく。

崩壊は大雪山系の登山道計約300キロの至る所で見られる。登山者が歩くと地面がくぼみ、そこに流れ込む水がさらに土を削る悪循環だ。

約20年前に大雪山系黒岳の山小屋で管理人を務め、惨状を目の当たりにした。崩壊を食い止めようと2011年に合同会社「北海道山岳整備」を設立し、本格的に登山道整備を始めた。

歩きやすさだけを考え、等間隔のコンクリート製階段など画一的な施工が目立った従来の方法に代わって用いるのは「近自然工法」。スイスで生まれた河川工法で、約10年前に登山道の整備にも導入された。

「登山道は川である」「必要以上に施工せず、構造は自然界から学べ」。岡崎さんが師と仰ぐ同工法の先駆者、故福留脩文さんの教えだ。自然の姿に戻すことを目指し、水の勢いを弱めるなどして崩壊の原因を取り除き、道を長持ちさせる。

登山者はどこを歩くか。どう排水すれば道に水があふれないか。水の流れを観察し、自然をまねる。現地の石や木で段差を作り、景観を守る。「『どこを直したの?』が一番の褒め言葉。ばれないようにやりたいんです」と岡崎さんは笑う。

近年、環境省や自治体が登山者のボランティアを募り、登山道を整備するイベントも盛んだ。旭岳中腹で9月上旬に開かれたイベント「たまには山に恩返し」では、32人の参加者が木材を運び上げ、段差の解消や木道の交換作業に汗を流した。

主催した北海道上川総合振興局の佐藤公一さんは「道が崩れた時に人力で維持管理できるのも魅力。近自然工法を多くの人に知ってほしい」と話す。来年度も続ける予定だ。

近自然工法による登山道修復は、東北地方の飯豊朝日連峰や小笠原諸島、徳島県の剣山などに広がっている。岡崎さんは「地元の山を地元の人が継続して直すのがいい。登るだけじゃなく、直すのも一つの楽しみ方です」と話している。〔共同〕

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