がん細胞排除に遺伝子関与 京大、ハエで仕組み解明
京都大の井垣達吏教授らは、できた直後のがん細胞が周囲の正常な細胞によって排除される仕組みを解明した。遺伝子を改変したハエで実験し、がん細胞の排除に関わる遺伝子をつきとめた。ヒトの体も似た仕組みを持つと考えられ、従来と異なるやり方でがんを治療できる可能性がある。成果は17日、英科学誌ネイチャーに掲載された。
ハエの組織やマウスの培養細胞を使う実験では既に、遺伝子変異などでできた初期のがん細胞が、周囲の正常細胞によって排除されることが知られている。ただ詳しい仕組みは不明だった。
京大は、約7500匹のショウジョウバエの様々な遺伝子を壊した後に、目の組織にがんのもととなる細胞を入れ、どのハエでがんが大きくなるかを調べた。
正常な細胞が持つ「Sas」という神経の成長に関わるたんぱく質を作る遺伝子を壊すと、がん細胞が排除されず、がんになった。その遺伝子を再び正常細胞に導入すると、がん細胞の増殖を抑えたり、細胞死を促したりしたため、その遺伝子ががん細胞の排除を担うことが判明した。
神経の成長に関わるたんぱく質は、がん細胞が表面に持つ「PTP10D」と呼ぶたんぱく質に付く。付着すると、がん細胞の増殖や生存能力が低下していた。
ヒトのがん細胞でも似た働きをするたんぱく質が見つかっている。そのたんぱく質を活性化させる薬を開発すれば、がんの増殖を抑えて正常な細胞によって排除させ、がんを初期の段階で治療できる可能性がある。