職場での旧姓使用認めず 地裁、教諭の請求棄却

結婚後の旧姓使用を認めないのは不当だとして、日本大第三中・高(東京都町田市)の30代の女性教諭が同校の運営法人に旧姓使用や損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、東京地裁であった。小野瀬厚裁判長は「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」として請求を棄却した。
教諭は判決内容を不服として控訴する。
判決によると、教諭は2003年から勤務。13年に結婚して戸籍上は夫の姓を選んだが、学校側に旧姓使用の継続を求めた。しかし学校側は教員として業務を行う際は、法に基づく呼称が妥当だとして旧姓使用を認めなかった。
同校では結婚した年度は旧姓で通し、翌年度から時間割や通知表、生徒出席簿、生徒指導要録、休暇、出張届などでは戸籍姓を使用している。ただ、この教諭は生徒や保護者、同僚からは旧姓で呼ばれている。
判決は「結婚後の旧姓使用は法律上保護される利益」と認めながらも、「戸籍姓は戸籍という公証制度に支えられており、旧姓よりも高い個人の識別機能がある」と指摘。職場という集団の中で戸籍姓の使用を求めることは合理性、必要性があると判断した。
職場での旧姓使用については「国や自治体の多くが認め、旧姓使用の範囲が広がる傾向にある。女性の社会進出の状況に応じて認めるよう配慮することが望ましい」と指摘。その一方で、現状や一部の国家資格が戸籍姓しか認めていないことなどを根拠に、旧姓使用が社会に根付いているとまではいえないとした。
教諭は「選択的夫婦別姓が実現していない現在の法制度では、旧姓を通称として使う権利が保障されるべきだ」と主張。学校側は「個人の識別で戸籍姓よりも優れたものはない。慣行に従った平等な取り扱いで、教諭を不利に扱ってはいない」と反論した。
学校法人「日本大学第三学園」の高瀬英久常務理事は「学園の主張が裁判所に理解された」とコメントした。