絵手紙励みに6年ぶり出荷 岩手のシイタケ復活期す

2017/5/11 9:32
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 「岩手の味を守る」。父親の代から原木シイタケ栽培を続ける岩手県一関市の佐々木久助さん(63)が今春、6年ぶりに出荷を再開した。東京電力福島第1原発事故の影響が長引き廃業も考えたが、再開を願う地元中学生の絵手紙に励まされ一念発起。かつて有数の生産量を誇った「シイタケ王国」の復活を期す。

 一関市の山林の一角に、長さ約1メートルの丸太が2千本、整然と並ぶ。表面には丸々と太ったシイタケ。この「ほだ木」と呼ばれる丸太に、佐々木さんが地元中学生と菌を植えたのは2年前。「一つ一つに支えてくれた人の心が詰まっている」。生産規模は最盛期の10分の1以下だが、念願の収穫に佐々木さんの頬が緩んだ。

 2011年3月の原発事故で放射性物質が各地に飛散した。150キロ以上離れた一関市でも基準値を超える放射性物質を検出。佐々木さんは約2万本のほだ木や収穫予定だったシイタケの処分を余儀なくされ、12年4月には国の指示で出荷できなくなった。

 寒さでうま味が凝縮する岩手の原木シイタケは長年、干しシイタケとして人気を博してきた。しかし周囲は東電の賠償金を受け取り、次々と引退。出荷再開を目指し山林の下草を刈るなど除染を進めたが、制限解除の見通しは立たない。「辞めた方が楽だな……」。15年春、ついに心が折れた。

 そんな時、知人から中学生が授業で作った絵手紙の束を渡された。「シイタケは力強い」「絶対負けねえ」。一枚一枚、丁寧に描かれたシイタケの絵とメッセージ。「地元の宝をなくすわけにはいかない」。勇気をもらい、再び動きだした。

 出荷制限は今も続くが、県の厳しい安全基準を満たせば出荷できると知り、県外産のほだ木を使うなど放射性物質の影響を受けない栽培方法を徹底した。絵手紙をきっかけに交流が始まった中学生も、シイタケを描いた看板を作って応援。今年2月、仲間約10人とともに、ついに出荷が認められた。

 道は今後も険しい。一関産が消費者に受け入れられるかどうかは未知数だ。「諦めた方が賢いけど、うまいシイタケを作るのがみんなへの恩返し」。次の目標は地元産ほだ木の使用再開だ。そうなって初めて、シイタケ王国復活への第一歩と信じている。〔共同〕

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