茨城・常総の住民「こんな恐ろしい光景初めて」

2015/9/11付
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 渦巻く茶色の濁流が、瞬く間に街をのみ込んだ。10日、茨城、栃木両県を中心に関東地方を広く襲った大水害。鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市では、自衛隊や警察のヘリが屋根などに取り残された住民を救い出したが、なお600人以上が救助を待つとみられる。避難所にたどり着いた人たちは、一様に疲れ果てた表情をみせた。

 「家が流されている」。決壊場所の近くに住む農家、大里保男さん(70)は10日昼すぎ、自宅2階で滝のように川から水があふれ出すのに気づいた。目の前の道路を壊れた住宅や大木が流れていく。「これはまずい」と思ったが、すでに自宅の階段の途中まで浸水していた。

 周囲には、電柱に登って助けを求める人や軽自動車の天井に乗って流されていく人が見えた。自分も屋根に。自衛隊のヘリコプターに手を振り、間もなく救助された。「2階にいたら助かると思っていたが考えが甘かった。鬼怒川がこんなことになるのは見たことがない」と振り返った。

 同市の農業、岡田光生さん(79)は、決壊の瞬間を目撃した。午後1時ごろ水門の様子を見に行くと、対岸の土手が崩れて土が露出し、大きな波しぶきが上がっていた。えぐられた堤防はみるみる壊れ、民家が徐々に傾いて10分ほどで波にのまれた。「こんな恐ろしい光景は初めてだ」

 集まっていた近所の人らが「あー」とおびえた声を上げる。普段は穏やかな川面が何メートルも盛り上がり、流れに耐えた住宅も、かろうじて屋根が見えるだけだった。

 現場周辺では、取り残された家屋からヘリコプターやボートで救助される光景が至る所で見られた。1時間以上にわたって電柱にしがみつき、手を振り続けた男性もいた。

 市内の総合スーパー「アピタ石下店」では来店客と従業員計約100人が取り残された。運営するユニーによると、午前10時15分ごろから浸水が始まり、15分ほどで腰の高さにまで水位があがった。客らは2階に避難し、従業員が社員食堂などを開放して救助を待った。

 鬼怒川から約1.5キロメートル離れた同市内の石下西中学校には170人以上が集まった。道路があちこちで寸断され、救援物資が届かず食料は不足している。

 川から200メートルほど離れた若宮戸地区に住む無職男性(75)は「2方向から水がどんどん押し寄せてきた」と振り返った。

 男性によると、近所の土手を水が越えてきた。土手は2~3階建ての住宅ほどの高さがあったが、昨年業者によるソーラーパネルの設置工事で削られ低くなった。「大雨が来たらどうなるんだと地元で話題になっていた」と話した。

 「危険です。避難してください」。川岸から数十メートルに住む会社員の新井清生さん(36)は午前2時すぎ、避難を呼び掛けるスピーカー音で目を覚ました。川を見ると見たことのないほど水位が高く「今にもあふれそうだった」。急いで家族4人で避難した。「早く判断してよかったが、いつまで避難所にいるのか……」と疲れ切った表情で話した。

 市内の水海道小学校には約400人が避難。決壊場所に近い石下地区の60代男性は、「津波に遭ったような光景だった」と話す。自宅は20センチほど床上浸水し、午前9時ごろボートで救助された。近所には流された家もあったという。

 警察庁は10日、周囲が浸水するなどして690人が孤立し、救助を待っているとの見方を明らかにした。同日午後11時現在、避難所となった地域交流センターに約560人、残る約130人が総合スーパーや自宅などに取り残されたとみている。

 同庁は、大規模な災害現場で救助活動にあたる広域緊急援助隊に出動を指示。10都県警の455人、消防は1都3県の150人が現地に派遣された。このほか警察8機と消防6機のヘリが救助活動を展開した。

 警察は夜間もボートを使った救助を続け、11日はヘリを11機に増やして再開する。

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