2019年2月17日(日)

衆院選、農家票 迷い悩む TPP・農協改革・後継者不足…

2014/12/12付
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環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加、生産調整(減反)の見直し、農協改革……。安倍政権は農業の競争力向上を掲げ、農家を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。衆院選で各党は高齢化と後継者不足がつづく農業の未来をどう描くのか。コメどころの山形県でさまよう農業票の行方を探った。

12月上旬、雪に覆われた米沢盆地の北東部にある南陽市。農業生産法人「黒沢ファーム」で、代表の黒沢信彦さん(50)が得意先からの電話や運送会社との打ち合わせに追われていた。事務所のホワイトボードには東京や仙台などでの営業活動のスケジュールが並ぶ。

1991年から農協を通さないコメの直接販売を始めた。15ヘクタールの田んぼで、炭を使った土の改良や蜂蜜を混ぜた水まきなどアイデアを生かし、味を追求した。そのコメは数々のコンクールで賞を獲得するなど評価を高め、全国の消費者や料亭などに出荷している。

近年は香港やシンガポールのホテルでも使われ、輸出は売り上げの1割を占める。黒沢さんは「人口減で日本人の胃袋が増えない以上、海外に打って出るしかない。山形のコメの品質は世界でもトップクラス。売り方を工夫すれば、TPPはむしろチャンスだ」と意気込む。

ただ「攻めの経営」に成功している農家は多くはない。南陽市の南西にある川西町の男性(33)は「このまま農家は切り捨てられるのではないか」と不安を口にする。

代々続くコメ農家の跡取りとして22歳で就農した。当時農協から支払われる仮渡し金は、主力米「はえぬき」で60キロあたり1万数千円だった。しかし今年、過去最低の8500円になり、収入は激減した。

2年前、地元の20~30代の若手専業農家十数人と有志の会を結成。月1回、農業技術やブランド化の勉強会をしているが、「結果はすぐには出ない。頑張ろうとしている農家からも脱落者が出てしまうかもしれない」と心配する。政治には「専業農家の意見をよく聞き、地方で農業を続けられるような政策を示してほしい」と述べた。

高齢化に伴う離農者も増えている。地元のJA山形おきたまによると、生産者約4700人の平均年齢は60代半ばで、多くは後継者がいないという。

厳しい状況の中で農業票の行方も揺れている。2012年の衆院選の山形2区(南陽市や川西町など)では、農協の政治団体「山形県農協政治連盟(県農政連)」は、TPP反対を掲げる自民党の候補を推薦した。その後、自民党政権がTPP交渉を進めたため、県農政連は反発。13年の参院選では非自民系の候補を推薦した。

今回の衆院選では再び自民党候補を推薦した。ある農協幹部は「やはり政権与党とのつながりは必要だ」と説明する。ただ「自民大勝ともなればTPP交渉も農協改革も官邸主導で突き進むのでは」とも懸念する。

危機感を募らせる農家に、与野党を問わず政治は農業の競争力を高めて若い就業者を増やす成長戦略を示せるのか。黒沢さんは言う。「日本の農業は高品質の製造業のはずなのに、消費者に魅力を伝えられていない。海外の販路開拓も含め、農家と消費者を結びつける政策を強めてほしい」

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