2019年4月24日(水)

医出づる国 第8部

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ご当地医療にアイデア続々 地域で患者支える
明日を拓く(1)

2016/3/25 2:00
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昨春、名古屋市南部のJR南大高駅前に「よってって横丁」という名の建物がオープンした。診療所や介護事業所などが入る。

高齢者のための場所というわけでもない。自習室やレストラン、カフェも備え、老若男女が集う。

2010年には横丁の隣に総合病院ができた。吹き抜けのロビーは地域住民が通勤通学で通り抜ける。建物内にはレストランやフィットネスクラブ、図書室、病児保育室などがある。病院らしくない病院だ。

これらをつくったのは、南医療生活協同組合。同生協はこの地域に8万人近い組合員を抱える。これら組合員が「地域に必要なもの」を徹底的に議論した。

組合員は口だけでなく、カネも出す。新病院の建設には20億円、横丁には3億円の出資金を集めた。これまでにも同様の方式で診療所や介護事業所などを次々と立ち上げてきた。

ボランティア活動も盛んだ。医師が診察室で独居の高齢患者らの生活の困り事を聞くと、それが地域の組合員に伝わり、問題解決を手伝う仕組みもある。組合理事の杉浦直美さんは「医療だけでその患者の暮らしは支えられない。地域の助け合いがいる」と語る。

日本が若かった頃は、病気やけがの患者を入院させるなどして治療し、社会復帰させる病院中心の医療でよかった。しかし高齢化が進み、慢性疾患を抱えながら生きる高齢患者が増えた今は介護や生活支援なども併せて求められる。

いわば「地域で治し、支える医療」だ。医療費が膨らむ中、医療資源を効率的に使うこともますます重要になる。ただ地域の人口や高齢化はそれぞれ異なるので、全国一律で同じ形はあり得ない。そこで「ご当地医療」づくりが大切になる。南医療生協は住民を巻き込み、地域に合った形をつくりつつある一つの例だ。

大阪府の出生数、小児科医の数などを分析すると、地域によっては分散している新生児集中治療室(NICU)の集約などが必要になる――。

3月13日、都内で開いた医療シンポジウム。この中で様々なデータから地域医療の将来像を描くコンペの結果が発表された。一般市民も含めた応募作の中で最優秀賞に選ばれたのは臨床現場の医師の提言だった。

「ご当地医療」づくりといっても、まだ戸惑いが多い。そこで東京大学公共政策大学院の研究会「医療政策実践コミュニティー」は地域別の病床数などのデータベースをつくり、これを活用して広く考えてもらおうと、コンペを実施した。

埴岡健一・同大学院特任教授は「医療関係者だけでなく、市民もデータで地域の状況を理解し、議論しないと医療は変わらない」と強調する。天から地域に最もふさわしい医療体制が降ってくるわけではない。地域の多くの人たちが積極的にかかわり、考え、行動することが大切になる。

    ◇

医療がより良いものになれば、私たちの暮らしはさらに豊かになる。そのための手立てを考える。

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