引き揚げの街 舞鶴沸く 記憶遺産にシベリア抑留資料

2015/10/10付
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酷寒の地での苦難の歴史に光が当たった。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が9日(日本時間10日)、シベリア抑留などの資料「舞鶴への生還」と国宝「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」を世界記憶遺産に登録すると決定し、待ち望んだ地元の関係者は歓声を上げた。「過去を風化させない」。平和への誓いを新たにした。

シベリア抑留の資料を所蔵する舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)では9日夕方から、語り部や市民らが集まり、朗報を待った。「やった」「おめでとう」。10日未明、大型スクリーンに映し出されたユネスコのホームページが記憶遺産の登録決定を伝えると、100人以上が歓喜の声を上げて万歳した。

NPO法人「舞鶴・引揚語りの会」副理事長、山田昌道さん(73)は「資料一つ一つに過酷な体験を受けた方々の思いが詰まっている」と感無量の様子。「一人でも多くの人に伝えていきたい」と意気込んだ。

抑留中の思いを和歌などで記した「白樺(しらかば)日誌」や、犠牲者の名前や住所を書き留めた手帳、家族に宛てたはがきなど所蔵資料から計570点の登録候補を選んだ東京女子大の黒沢文貴教授(日本近代史)も「人々の絶望や生きる力といった人類に普遍的な主題がちりばめられている資料。世界の共有財産だ」と強調した。

10日午前には、引き揚げ開始から70年を受けた平和祈念式典も開かれた。多々見良三市長は「資料を寄贈してくれた引き揚げ者や家族との約束をかなえることができた」と話した。

自身の体験を描いたイラストが登録された千葉県柏市の木内信夫さん(91)は「引き揚げを笑顔で迎えてくれた舞鶴の人たちや天国の戦友に伝えたい」と感慨深げ。舞鶴市立若浦中学校3年の神成稜生さん(14)は「自分が住む町の資料が登録されて誇らしい。歴史を勉強し、受け継いでいきたい」と決意を語った。

式典では抑留体験者の安田重晴さん(94)と地元の高校生が、引き揚げ船「興安丸」の鐘を鳴らしたのを合図に市民ら約650人が黙とうし、犠牲者を悼んだ。

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