常磐線・浜吉田―相馬間が再開 震災5年9カ月「ついにこの日が」

2016/12/10 12:54
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東日本大震災で甚大な被害を受けたJR常磐線の相馬(福島県相馬市)―浜吉田(宮城県亘理町)間で10日、5年9カ月ぶりに運行が再開された。通勤や通学など沿線住民の暮らしを支える交通機関が再び動き出し、人々は列車が疾走する光景に街の復興を重ねた。

5年9カ月ぶりにJR常磐線の浜吉田―相馬間での運転を再開し、山下駅を出発する一番列車(10日午前、宮城県山元町)=高木雄一郎撮影

被災前より内陸側に移設され運転を再開したJR常磐線の浜吉田―相馬間(10日午前、宮城県山元町)

おかえりなさい!――。10日午前5時半すぎ、警笛を鳴らしながら一番列車が山下駅(宮城県山元町)に入ってくると、ホームにつめかけた住民や役場関係者、約300人から歓声と拍手が起きた。

「ついにこの日がやってきた」。車両の前であいさつをした斎藤俊夫・山元町長は声を詰まらせた。「共に途切れた鉄路がつながる喜びと安堵感を分かち合いたい」。その後、乗客を乗せた列車がゆっくりと仙台に向け動き出した。

この日運行を再開したのは約23キロメートル。山下と坂元(山元町)、新地(福島県新地町)の3駅が津波で流され、駅や線路を最大1.1キロ内陸側に移設し、移設区間の4割を高架化するなど大がかりな復旧工事となった。この区間の運行再開で、復旧が先行した相馬以南も仙台方面につながる。

同町在住で町役場で働く藤川香奈江さん(42)は娘2人と一番電車を見送りに来た。「長女の小学校の同級生は震災後に6~7人転校していった。これを機に戻ってきてもらえれば」。長女の玲己さん(12)は「電車で仙台に行って映画を見たり、買い物をしたりしたい」と喜ぶ。

JR東日本は震災後、代替バスを運行しているが、相馬から浜吉田の1つ先の亘理まで片道約1時間かかる。常磐線の復旧で同じ区間を30分で行けるようになるという。

山元町の佐藤亜海さん(21)は震災の日が中学校の卒業式だった。仙台市内の高校に進学。代替バスに乗るため午前6時前に自宅を出る生活を3年間続け、今も2時間かけて大学に通う。「まもなく就活が始まるので、通学時間が減るのは助かる」と笑顔を浮かべた。 同町在住の佐々木静子さん(78)は月に1度、仙台市内の耳鼻科と眼科で診察を受けている。「家から仙台駅まで2時間ほどかかって大変だったが、だいぶ短くなるので助かる」と話した。

在校生の2割弱が代替バスを使う新地高校(福島県新地町)の緑川裕之教頭は「今の生徒にとって、母校に『最寄り駅』があることは初めての経験。みんな喜んでいる」と話す。同校では震災で在校生1人と11年卒の卒業生8人が犠牲となった。追悼のため新地駅の近くに植樹する予定だ。

常磐線では今も竜田(楢葉町)―小高(南相馬市)が不通で、国は2019年度中の全線運行再開を目指す。

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