2019年9月18日(水)

立ち直り、支える仕組みを 少年法議論スタート

2017/2/10 22:01
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「仕事の面接はうまくいっているか?」。2月上旬、首都圏のマンション建設現場で中年男性が若い男性に声をかけていた。若者は少年鑑別所を出て、いまはこの現場を含めアルバイトを掛け持ちしながら職を探す。

若者を支えるのが鳶(とび)の会社「セリエコーポレーション」(神奈川県横須賀市)の岡本昌宏代表(41)。過去12年間で少年院を出た若者など約250人を受け入れてきた。昨夏には様々な職業体験を仲介するNPO法人を立ち上げた。仕事を得ることが、更生の一歩と考えるからだ。

岡本さん自身、かつては非行少年だった。中学時代に傷害事件を起こして転校。大学は3カ月で退学し、繁華街で仲間とつるみ、薬物にもはまった。「いつか捕まるだろうな」。そんな時に出会った現在の妻に諭され、生活を変えた。鳶の世界に飛び込み、30歳で会社を興した。

少年法の適用年齢の引き下げに賛否はない。しかし多くの少年と接した経験から、「非行に走る少年は成熟のスピードがゆっくり。18、19歳でやっと成長が感じられる」と実感している。少年院や保護観察所で立ち直りの支援を受けられないと、再犯の可能性はむしろ高まると考える。

年齢引き下げとともに、法制審議会(法相の諮問機関)では刑罰のあり方の見直しも議論される。懲役刑と禁錮刑の一本化、犯罪傾向に応じた更生プログラム……。対象は全年代だが、念頭にあるのは引き下げで「成人」の仲間入りをする若者たちの処遇だ。

その18、19歳の処遇は現在どうなっているのか。東京都八王子市の丘陵に立つ多摩少年院(定員174人)。収容者のほとんどが18、19歳だ。少年法が改正されれば、多くは刑務所で服役する可能性がある。

少年院では教科学習や職業訓練を柱に、一人ひとりに担任の先生(法務教官)がつき、生活指導や悩み相談にのる。木工や洋裁などの刑務作業が中心の刑務所に比べると体制は手厚い。日下部隆院長(60)は「彼らはまだ十分変わりうると肌身で感じる。適用年齢が下がっても今の少年矯正の機能を生かせる制度が必要」と訴える。

刑期を終えた時にスムーズに社会復帰し、再犯を防ぐ仕組みづくりが求められている。法制審では、現在のように若い受刑者に学習や生活指導を行うことなども議論する見通し。保護観察所や医療・福祉機関と連携した更生プログラムや収容者が減っている少年院の活用策、裁判所が刑や判決をしばらく言い渡さずに社会で更生を図る新たな制度などもテーマになりそうだ。刑罰と更生のバランスをいかにとるか。課題は多い。

関係者の多くが重要だと口をそろえるのは、罪を犯した少年一人ひとりに向き合い、丁寧に立ち直りを支える姿勢だ。19歳で少年院に入り、今は岡本代表の下で働きながら起業を目指す男性(22)はこう話す。「少年院で初めて親身になってくれる大人に出会った。あの先生は裏切れないから頑張るんです」

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