【ミュンヘン=共同】ドイツの歴史研究機関、現代史研究所(南部バイエルン州ミュンヘン)は8日、第2次大戦後、事実上出版が禁じられてきたナチスの独裁者ヒトラー(1889~1945年)の著書「わが闘争」を歴史面の注釈などを加えて再出版した。
同研究所は記者会見し欧州で排他主義が再び台頭しつつあると指摘。「そういう時代だからこそナチスを研究し、議論の土台を提供する必要がある。『わが闘争』も例外ではない」と再出版の背景を説明した。
これまでも出版計画が持ち上がったが、ヒトラーの生前の住民登録先だった関係で著作権を保有するバイエルン州はホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の生存者に配慮し認めてこなかった。著者の死後70年間保護される著作権が昨年末に切れ、第三者による出版が可能になった。
ドイツではナチス称賛につながる書物の配布が禁じられているが、学術目的なら出版は可能。原作は780ページ程度で、ネオナチによる悪用を防ぐために同研究所が原文に批判的な注釈を付け、2巻合わせて計約2千ページに膨らんだ。価格は59ユーロ(約7600円)で、数千部を発行する予定。