性暴力被害、支援施設整備を後押し 国が交付金
政府は、レイプなどの性暴力に遭った被害者が治療や相談を一カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」を全都道府県に整備するため、2017年度の予算案に交付金1億6千万円を初めて計上した。これまで資金難にあえいできた各地のセンター関係者は「助かる」と歓迎しており、未開設の県の後押しにもなりそうだ。
性暴力の被害者は心身に深い傷を負い、警察などに相談できない人も多い。ワンストップ支援センターは"駆け込み寺"としてそうした被害者を受け止め、心身の傷を癒やし、後日告訴ができるよう証拠を保存。警察や弁護士への相談にも同行するなどして支える。
国は20年までに各都道府県に少なくとも1カ所設置することを目標に、12年に「開設・運営の手引」を公表。昨年12月1日までに34都道府県が設置したが、公的な資金援助は乏しかったため、財源確保が課題だった。
新設されるのは、性犯罪・性暴力被害者の支援体制整備促進の交付金。センターの開設費や運営費のほか、警察に相談しなかった被害者の医療費、医療関係者や相談員の研修費などが対象となる。自治体が負担した経費の2分の1または3分の1を国が補助する。
全国で初めて10年に大阪府の民間病院に開設した「性暴力救援センター・大阪」(SACHICO)は現在、運営費のほとんどを寄付金でまかなっている。24時間体制で対応する相談員の人件費や、被害者への医療費補助などがかかり、資金不足は深刻だ。
代表の加藤治子医師は「寄付に頼った活動には限界があり、交付金がなければやっていけない」と訴える。まずは自治体が被害者支援の予算を組まなければ交付金も支給されないので「各自治体は早急に予算を計上してほしい」と強調した。
12年にセンターを開設した佐賀県の担当者は「センターは法律に基づくものではないため、設置に消極的な自治体もあったと思う。国が交付金で後押しすれば、全国的な整備がより一層進むだろう」と期待を込めた。今後設置を検討するという山梨県の担当者も「開設には資金や人材の確保が課題となるため、交付金の創設は前向きな検討につながる」と喜んだ。〔共同〕