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虐待死、年350人の可能性 国集計の3倍超

日本小児科学会は8日までに、虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子供が全国で年間約350人に上るとの推計を初めてまとめた。東京都や群馬県など4自治体分のデータ分析に基づく試算。厚生労働省の2011~13年度の集計では、虐待で死亡した可能性のある子供は年69~99人(無理心中も含む)で推移しており、厚労省の集計の3~5倍になっている。

厚労省の集計は各都道府県などからの報告をまとめたもの。日本小児科学会は「医療機関や行政、警察の間での情報共有や検証が不十分で、多くの虐待死が見逃されている恐れがある」として国に対応強化を求めている。

調査は、学会の「子どもの死亡登録・検証委員会」が担当した。委員会所属の小児科医が働いている群馬県と東京都、京都府、北九州市の4自治体で、11年に死亡した15歳未満の子供(東京都は5歳未満のみ)368人を分析した。医療機関の協力を得て死亡事例を検証し、一部は担当医らへの聞き取りもした。

その結果、7.3%に当たる27人は「虐待が死亡の原因だった可能性がある」と判定。(1)激しく揺さぶられ脳を損傷する「乳幼児揺さぶられ症候群」(2)子供だけでの入浴による溺死など保護者が監督を怠った事例(3)適切な治療を受けさせない「医療ネグレクト」――などが確認された。

国のデータから全国で1年間に亡くなる子供を約5千人と想定し、4自治体の割合を全国規模に換算すると、虐待死の可能性があるのは約350人になると推計している。厚労省の集計では、虐待を受けて死亡した子供(18歳未満)は11年度に99人、12年度90人、13年度69人だった。

学会の調査との間で人数に差異が生じる要因について、委員会は臨床医に生前の生活状況などの情報が届かず虐待を見抜くのが難しいほか、医療機関や児童相談所、警察の間で虐待死と判断するかどうかの見解にずれがあるためと説明する。

溝口史剛委員長(前橋赤十字病院)は「虐待を含め、本来防げるはずの死亡事案を可能な限り減らすため、多機関が連携して全ての子供の死因を討議、検証する制度が必要だ」と話している。

▼児童虐待の現状 厚生労働省によると、全国の児童相談所が2014年度に対応した児童虐待の通告は約8万8千件で過去最多。1990年度の集計開始以来24年連続増で、初めて8万件を突破した。政府は対策強化のため、児童相談所の体制や権限を強化する児童福祉法と児童虐待防止法の改正案を今国会に提出している。ベテラン児童福祉司や弁護士の配置の義務付けや、強制的に家庭に立ち入る「臨検」の手続きの簡略化、虐待を受けた子供の自立支援策などが盛り込まれた。

〔共同〕

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