数研出版も教科書検定で謝礼 「信頼損い深く反省」
教科書を発行する「数研出版」(東京)が検定中の教科書を教員に見せたり、意見を聞いた謝礼に数千円分の図書カードを渡したりしていたことが2日、同社への取材で分かった。文部科学省や業界団体はこうした行為を禁止しており、同社は「ルール違反を認識した上で営業活動をしたのは事実。信頼を損なう行為で深く反省している」としている。
検定中の教科書を巡っては、三省堂(東京)が校長ら53人に見せて謝礼を渡し、うち21人がその後に自治体の教科書選定に関わっていたことが判明している。文科省はこの問題を受け、他の会社でも不適切な行為がなかったかを検証し、今月20日までに報告するよう求めている。
数研出版によると、同社は2016年度から使われる中学の教科書を検定中だった14年度、複数の教員を公民館や貸会議室、ホテルに呼び、中学数学の教科書を見せた。このうち少なくとも教員1人に、謝礼として数千円分の図書カードを渡したという。
同社は12年度に中学数学の教科書に参入。この教科書の作成が始まった09年には、著作・編集者のほかにも教員を複数集めて意見を聞き、3千~5千円分の図書カードを渡していた。この教科書は15年度まで使われており、検定があった10年度など他の時期に同様の行為があったかどうかについては調査中。教員に中元や歳暮も贈ったケースもあったという。
文科省や教科書会社でつくる教科書協会(東京)は検定中の教科書を外部に見せたり、採択関係者に金品を提供したりする行為を禁止している。同社の担当者は「編集過程で様々な意見を聞くためだった。謝礼を渡した教員が採択に関わったかどうかは把握していない」と説明している。
数研出版は1923年に京都で創業した。数学などの参考書「チャート式」シリーズで知られ、16年度から使われる中学数学のシェアは5.5%。高校の「数学1」では約6割を占める。