広報誌をスマホで読んで 自治体、若者意識し導入
全国で自治体の広報紙をアプリを使ってスマートフォン(スマホ)やタブレットで読めるサービスが広がり始めている。最新号が自動的に届き、気になる記事を保存したり過去の記事も読んだりできるメリットがあり、紙面に端末をかざすと写真が動き出す種類もある。背景には広報紙の読者層を若い世代に広げたい自治体側の狙いがあるという。
昨年7月にアプリ「i広報紙」を開発したのは福岡市の広告会社「ホープ」。これまでも広報紙を電子化する自治体はあったが、i広報紙は広告収入でサービスを維持するため自治体や読者にかかる負担がないという。今年9月1日までに全国約1700市町村の1割以上にあたる231市町村が採用した。
きっかけは東日本大震災。岩手県で道路が寸断し、同社が広告を担当していた県の広報紙の配布ができなくなり「電子化すれば配信できる」と思い付いたという。
広報紙の配布は自治会への委託や新聞折り込みが主だが、自治会に未加入だったり新聞を購読していなかったりする世帯には届かない。同社の担当者は「アプリなら、そうした穴を埋められる」と話す。
日本広報協会によると、アプリの導入が広がる背景には、スマホの普及や、40代の子育て世代以上が主だった読者層を若い世代に広げようとする自治体側の動きがあるという。同協会は「スマホなら興味のある自治体の広報紙も読めて、ふるさと納税やIターン・Uターンなど引っ越し先の情報収集にも役立つ」と指摘する。
佐賀県は同様のアプリを独自で開発し、今年1月から県民だよりを配信する。広報紙で県への感想を募っているが、これまで若者からの反応がほとんどなく、スマホを利用して若者も読者層に取り込みたいという。
熊本県菊池市の広報紙は無料アプリを使って紙面上にスマホをかざすと動画が見られる「拡張現実(AR)」を採用した。「音や動きがあればより雰囲気が伝わる」と、毎月、職員が観光PRにつながるイベントなどを撮影し配信する。
埼玉県三芳町でもこの技術を導入。写真では伝わりにくい音楽イベントや手話講座などを配信し、読者からは「イベントに参加しやすくなった」「町との距離感が縮まった」との声が寄せられているという。〔共同〕