山林の荒廃どう防ぐ 2050年までに「所有者不明」47万ヘクタール

2014/9/2付
保存
共有
印刷
その他

所有者が分からなくなり、荒廃が進む山林が増えている。国土交通省はこのほど、2050年までに新たに最大47万ヘクタールの森林が「所有者不明」になるとの推計をまとめた。所有者や境界がはっきりしないと間伐や林道整備もままならないうえ、林業の集約も進まない。航空写真と全地球測位システム(GPS)で境界を調べたり、間伐材を製品化したり。自治体や森林組合が知恵を絞っている。

「あの山の中に私の土地があるはずなんです……」。約40年前、住民が集団移転した富山県魚津市の山あい、古鹿熊地区。減反要請に応じ、父から継いだ田に杉を植えて市街地に移住した谷山肇さん(72)が、痩せ細った杉が生えそろう薄暗い山中を登っていく。

GPSを活用

この日は、谷山さんを含む元住民ら3人が境界線のくいを打つために山に入った。富山県東部の山林を管轄する新川森林組合(魚津市)が1950年代から現在までの航空写真を用意し、写った木の樹齢の違いなどから境界を推測。境界が定まると、GPSを搭載した端末で位置を記録していく。

同組合は2008年から、森林の所有者や境界線を特定する活動を始めた。同組合の佐竹謙二企画課長は「登記はでたらめなものも多く、どれほどの所有者や境界不明の土地があるか分からない」と話す。

国交省によると、全国で所有者が分からない森林面積に関する統計はないが、50年までに新たに最大47万ヘクタールの森林の所有者が不明になると試算する。国内の森林面積の1.9%にあたる。

国は1951年から所有者や境界を画定させる地籍調査を行うが、林地の進捗率は44%(3月時点)。もともと平地より境界があいまいなうえ、所有者が分かっても連絡がつかないケースもある。

雨で崩れやすく

「所有者が分からなければ作業のための林道にも手を付けられない。周辺一帯の山が荒れる可能性もある」と話すのは愛媛県森林整備課の担当者。間伐が実施されないと立木の幹や根が十分に育たず、雨で表土が崩れやすくなるなどの弊害がある。森の保水力も弱まる。影響は深刻だ。

愛媛県が出資する公益財団法人「愛媛の森林基金」は所有者と管理委託契約を結び、間伐など山の整備に取り組む。当初の目標は12年度までに1万500ヘクタールだったが、現在までに約5千ヘクタールしか間伐できていない。

森林の価値を高めることで、所有者にメリットを感じてもらう取り組みもある。村の面積の95%を森林が占める岡山県西粟倉村の森林組合は10年から、所有者に代わって間伐し、木工品に加工して販売している。

所有者には分配金が還元される。これまで500人から山林を預かり、680ヘクタールを間伐した。昨年度は間伐材1立方メートルあたり平均2800円を還元し、100人程度の所有者が新たに山を預けるという。同村産業観光課の担当者は「都市部に出た所有者と村の関係をつなぎ留める効果もある」と話す。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]