日銀、マイナス金利導入を決定 異次元緩和に転換点
日銀は29日開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策の導入を5対4の賛成多数で決めた。原油価格の下落や中国経済への不安で世界経済の先行き懸念が強まり、国内の景気や物価に悪影響が及ぶリスクが高まったためだ。銀行が日銀に預けるお金(当座預金)の一部に2月からマイナス0.1%の金利を適用する。2013年4月に導入した量的・質的金融緩和(異次元緩和)は大きな転換点を迎えた。

29日午後に黒田東彦総裁が記者会見を開き、決定理由などを説明する。金融政策を決める9人の政策委員のうち、白井さゆり、石田浩二、佐藤健裕、木内登英の4委員が反対を表明。14年10月の追加金融緩和の決定時と同じ5対4の薄氷の決定になった。日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」として、量、質、金利の3つで「必要な場合には、追加的な緩和措置を講じる」と明記し、一段の追加緩和にも含みを持たせた。
今回導入した仕組みでは、銀行がすでに日銀に預けた当座預金の金利は現在の0.1%のままで据え置く。銀行が新たに積み増す当座預金にマイナス金利を適用する。当座預金全体の金利を下げると、銀行の収益への悪影響が大きいためだ。
マネタリーベース(資金供給量)を年80兆円増やす目的で実施している資産の大量購入はこれまで通り続ける。今後も国債を年80兆円、上場投資信託(ETF)を年3兆円のペースで買い増していくことになる。
日銀は会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)もまとめた。2016年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しを従来の1.4%から0.8%に下方修正。政策目標の物価2%上昇の達成時期を従来の「16年度後半ごろ」から「17年度前半ごろ」に先送りした。
金融市場では年明け以降、日経平均株価が一時3000円近く下落し、円相場も一時1ドル=115円台まで円高が進むなど、不安定な動きが続いている。日銀は金融市場の混乱の背景には、世界経済の先行きへの強い懸念があると判断。21日に追加緩和を示唆した欧州中央銀行(ECB)と足並みをそろえ、緩和強化に踏み切った。
海外発の不安増大で企業がリスクに慎重になれば、新年度入りに合わせた企業の価格政策や春の賃金交渉にも悪影響が及びかねない。企業が設備投資を先送りするなどして景気回復にブレーキがかかれば、デフレ脱却も難しくなる。黒田総裁はこれまで物価の基調に不安が表れれば「追加緩和でも何でもやる」と発言していた。
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日銀の決定内容のポイント
○「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入
○民間金融機関が日銀当座預金に預けたお金に対して支払う金利(付利)をマイナス0.1%に引き下げ、今後、必要ならさらに金利を引き下げる
○日銀当座預金を3段階に分割し、それぞれプラス・ゼロ・マイナス金利を適用する
○マネタリーベースを年80兆円増加させる金融市場調節方針を維持
○ETFやREITなどの資産買い入れ額を維持