2019年2月22日(金)

日銀追加緩和、「期待」巡り賛否真っ二つ 決定会合議事要旨

2014/11/26付
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日銀が25日発表した10月31日の金融政策決定会合の議事要旨では、個人や企業の物価上昇への「期待」を追加緩和で強められるかが争点だったことが明らかになった。追加緩和で物価上昇への期待の再浮揚が可能と見る緩和派に対し、反対派は「期待」が高まる効果より副作用が大きいと主張した。平行線のまま5対4の採決で追加緩和実施が決まったが、黒田東彦総裁ら執行部が押し切った構図だ。

「原油価格の大幅下落が物価の下押し要因として働いている」。31日午前9時からの決定会合は、景気・物価情勢の点検から始まった。緩やかな景気回復は続いているが、物価の下押し圧力がこのところ強まっていると見る点では9人の委員はほぼ一致していた。

議論が動いたのは、今後の金融政策の検討に入った直後だ。「着実に進んできたデフレ心理の転換が遅れるリスクが大きい」。黒田総裁ら賛成派は異次元緩和で広がった物価上昇への「期待」がしぼむ不安を訴えた。

ゼロ金利状態が続き利下げによる金融緩和が閉ざされるなか、黒田日銀は大胆な金融緩和でデフレ心理を払拭する道筋を探ってきた。今回の物価低迷局面でデフレ心理が再燃すれば、企業や家計が投資や消費を手控え株高円安の流れが逆回転しかねないとの懸念が強まっていた。

「人びとの心理に働きかけることを踏まえると、可能な限り大きな規模を目指すべきだ」。緩和派は「デフレ脱却への揺るぎない決意」を示し、物価上昇への「期待」を再び刺激しようとした。

一方、緩和策に反対したのは森本宜久、石田浩二、木内登英、佐藤健裕の各審議委員。いずれも民間企業出身者だ。異次元緩和で株などの資産価格は上がったが、投資の伸びは鈍く融資もなかなか増えない。実務に精通した立場から見ると、追加緩和は波及経路がはっきりしない危うい政策に映った。緩和の副作用が効果を上回るとの立場だ。

効果は「かなり限定的なものにとどまる」「財政ファイナンス(日銀による財政赤字の補てん)とみなされるリスクが高まる」「国債市場の流動性を著しく損なう」「円安が進めば中小企業への悪影響が懸念される」。反対派の主張は「期待に働きかける政策は危うい」とした白川方明前日銀総裁の言葉と重なる。

昨年春に全会一致で異次元緩和を決めてから1年半。大胆な資金供給でデフレ脱却を図る「リフレ」の是非を巡る論争が追加緩和局面で再び噴出した形だ。採決は緩和派が押し切ったものの、相次ぐ反対派の懸念に明確な回答は示せていない。

意表を突いた追加緩和は政府側にもサプライズだったことも明らかになった。採決直前、財務省と内閣府からの出席者は会合を一時中断するよう求めた。麻生太郎財務相と甘利明経済財政相に追加緩和の可能性を連絡するためで、約10分間議事が止まった。

政府の求めで議事が中断したのは07年以来7年ぶり。だが政府の意に反して日銀が利上げを実施しようとした当時とは異なり、追加緩和での議事中断だ。「時宜を得たものだ」。10分の中断後、財務省と内閣府の出席者は急ごしらえで賛成論をぶった。政府側も電撃緩和をつかみ切れていなかった実情がにじむ。

今回の採決は5対4の薄氷の結果だったが、安倍政権が続く限り日銀内では追加緩和派の優勢は強まりそうだ。

15年には6人いる審議委員のうち、追加緩和に賛成した宮尾氏に加え、反対した森本氏が6月に任期切れとなる。審議委員は国会同意人事で、与党が12月の衆院選後も多数を確保すれば、安倍政権が積極緩和派を起用する見通しだ。来夏以降は議論が紛糾しても、6対3で追加緩和に踏み切れるとの見方がある。

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