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融資、担保より将来性で 金融庁が方針

金融庁は21日、今後の重点施策を示す「金融行政方針」を発表した。不良債権の処理を最重視してきたこれまでの姿勢を転換し、銀行に企業の将来性をみて貸し出しを増やすよう促す考えを明確にした。「顧客本位」を掲げて担保に頼らない融資の拡大を求める森信親長官の改革には、金融界から反発も出ている。

金融行政方針は森氏が長官に就任した2015年から年に1回公表している。今回の柱は(1)金融庁自身の改革(2)国民の安定的な資産形成を実現するための取り組み(3)金融機関のビジネスモデルの転換の3つだ。

銀行には土地などの担保や保証に頼ってきた融資姿勢の見直しを迫る。事業に将来性があっても担保がなかったり、創業から間もなかったりする企業が融資対象から除かれている現状を「日本型金融排除」と批判。銀行が目利きの力を高めて将来性のある事業への融資を増やすよう求めた。

融資の審査態勢について聞き取り調査する方針も盛り込んだ。菅義偉官房長官は21日の記者会見で「銀行に対して(担保がなければ貸さないという)批判は今まで何回となくあったが、このような形で明快にしたのは初めてだ」と述べ、金融庁の取り組みを評価した。

もう一つの柱は、貯蓄から投資への流れを後押しすることだ。

金融機関に「顧客本位の業務運営」の徹底を要求。投資商品の販売で金融機関が受け取る手数料を開示したり、分かりやすい商品説明を求めたりしている。年金基金などの運用機関にも最終的なお金の出し手の利益を最優先するよう促した。

今回の金融庁の方針にはさっそく、「当局が民間金融機関の融資判断にまで口出しするのか」(地銀首脳)といった反発も出ている。

金融庁の前身の金融監督庁は1998年、日本の金融システムの根幹を揺るがした不良債権問題の処理を使命に発足した。金融機関への検査・監督は「不良債権をこれ以上つくらせない」ことに力点を置いてきた。

検査では個別の融資の妥当性を厳しく追及し、貸し倒れに備えて引当金を積ませてきた。結果的に不良債権問題は収束したが、リスクがある融資を銀行が避ける副作用も生んだ。大手銀関係者は「担保に依存する体質にした一因は金融庁にある」と不満を漏らす。

金融庁も、検査や監督で不良債権の処理にばかり目を向け続けてきたことへの反省がある。

今回の方針で、検査・監督の見直しを柱に据えたのもそのためだ。低金利や人口減少が進むなか、預金を国債で運用して稼ぐモデルは崩壊。リスクを取って貸すという本来業務で収益力を高めなければ、日本の銀行は立ちゆかなくなるとの危機感が金融庁にはある。

地銀経営に詳しい地域の魅力研究所代表理事の多胡秀人氏は「すでに取り組んでいる銀行もある。文句を言うのは何もやっていない銀行で、変革を促す金融庁の方針は妥当」と話す。

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