円安・株高、背景に「ヘリコプターマネー」の臆測
政府・日銀が国民にお金をばらまくヘリコプターマネー(ヘリマネ)政策に踏み切るとの臆測が金融市場で浮上し、円安・株高が進んでいる。財政や通貨の信認を揺るがす禁じ手で、政府・日銀は否定するが、緩和相場を続けたい投機筋などがはやし立てている。

臆測が広がるきっかけは「ヘリコプター・ベン」の異名を取るバーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が12日、安倍晋三首相と面会したこと。14日午後には一部通信社が、首相ブレーンが4月にバーナンキ氏と同政策を議論したと伝え、円相場は1ドル=105円台に急落した。
ヘリマネ政策とは、中央銀行が生み出した返済する必要のないお金を、政府が国民に配る政策だ。国が元利払いの必要がない債券(無利子永久債)などを中央銀行に渡し、引き換えに受け取ったお金を商品券などの形で国民にばらまく。
通常の財政政策なら、政府は国債を発行して市場からお金を調達する。いずれは国債の元本や利子を返済する必要があり、そのためのお金は将来の増税などで賄う。国民にとっては長い目でみれば損か得か分からない政策であるため、受け取ったお金を消費に回しにくい。ヘリマネ政策なら国民は将来の負担を心配せずにお金を使える。
だが、弊害は大きい。世の中に出回るお金が増えるのでインフレになりやすくなる。全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)も14日の記者会見で「財政規律が失われるリスクがあり、必ずしも好ましい政策ではない」と指摘した。
日銀は今でも市場から国債を大量に買い取り、間接的に政府にお金を渡している。だが、いずれ保有国債の量を減らすはずで、財政規律はぎりぎりで保たれている。ヘリマネ政策は出口のない大規模緩和ともいえる。「円の信認を押し下げるどころかたたき壊す」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)との危惧も強い。
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