相談役への就任、経緯の開示必要 経産省研究会が報告書
経済産業省の有識者研究会は10日、企業のトップが現役を退いた後に就任する「相談役」について、企業が職務内容や就任の経緯などを開示すべきだとする報告書をまとめた。実質的な「院政」のようなかたちで現役経営陣の意思決定が制約される事態を憂慮しているためだ。年次報告書などで相談役の役割や処遇を明確にするよう経済界に求めた。
報告書では退任した最高経営責任者(CEO)や社長を相談役・顧問にする場合、指名委員会や報酬委員会の助言なども得ながら「どういった役割を期待するかを事前に明確にし、役割に見合った報酬を設定すべきだ」とした。
相談役・顧問の人数や役割などの情報を自主的に開示することについては「産業界が積極的に取り組むことを期待する」と企業の努力を促した。
経産省は昨年秋から大企業2502社を対象に調査(有効回答874社、有効回答率34.9%)も実施した。回答企業の約8割で相談役制度が存在し、全体の約6割で実際に相談役が就任していた。相談役の役割は「現経営陣への指示・指導」(約36%)が最多で、「財界活動」(約35%)が2番目に多かった。
報告書には社外取締役の活用方法や指名・報酬委員会の運営方法などの指針案も盛り込んだ。政府は月内にも今回の報告書をもとに指針の成案を作るが、法的義務を課すわけではないため、制度の透明性をどこまで高めることができるか見通しづらい。