G20「過剰生産に協調対応」 貿易相会合で共同声明
【上海=原田逸策】20カ国・地域(G20)の貿易相会合は10日、「鉄鋼などの過剰生産能力は協調した対応が必要だ」と指摘した共同声明を採択し、閉幕した。経済協力開発機構(OECD)などに舞台を移し、中国も交えて協議を続ける。
環境物品の関税を削減・撤廃する交渉は年末までの合意を目指すことで一致した。
過剰生産能力の問題を巡っては、声明に対応策を書き込むよう求める日米欧に対し、中国は「構造問題なので貿易相会合では議論できない」と反対していた。中国が国内で消化しきれない鉄鋼を安値で輸出し、日米欧など世界の鉄鋼メーカーの業績が悪化していることが対立の背景だ。
声明は過剰生産問題が「貿易と労働者にマイナスの打撃を与えている」と指摘した上で、「政府などからの補助金やその他の支援が一因」と分析した。中国の国有企業への補助金などが念頭にある。
解決に向け「対話と協調を深め、市場機能を高めて調整を促すようにさらに効果的な対策を取る」とした。政府支援なしには存続できない「ゾンビ企業」の淘汰を中国に求めたものとみられる。
声明はG20の鉄鋼生産国に9月に開くOECDの鉄鋼委員会へ参加するよう求めた。過剰生産問題を議論する「世界フォーラム」設置の可能性も話し合う。
もう一つの焦点は、太陽光パネルや発光ダイオード(LED)など環境関連製品の関税削減・撤廃を巡る世界貿易機関(WTO)での交渉だった。声明は「年末に開く交渉の閣僚会合までに妥結し、9月のG20サミットまでに着地点を得る」との表現を盛り込んだ。
環境物品の関税については、日米欧中など46カ国・地域が協定締結に向けて協議中だ。だが、インドは交渉に加わっていない。中国は関税撤廃でインド製品が流入することを懸念し、具体的な妥結時期を書き込むことに反発していた。
5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言では「9月のG20サミットまでに妥結を目指す」としていたが、妥結時期を事実上、年末に先送りしたかたちだ。
10日の声明は「幅広い環境物品の関税を撤廃する野心的な協定」と高水準の合意をめざす方針も打ち出した。
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