銀行、カードローン抑制 多重債務問題に対応
簡単な審査で数百万円に上るお金を借りられるカードローンを巡り、大手銀行や地方銀行が融資の抑制に乗り出す。国会や法曹界で多重債務問題を助長しているとの批判が強まっているため。上限額を下げたうえで利用者の正確な年収を把握し、過剰な融資を防ぐ。銀行は貸金業法の適用外で残高を大きく伸ばしてきたが、個人向け金融事業の見直しを迫られる。

カードローンは無担保で使途の制限がない融資で、金利は個人の信用力などに応じ年1.8~15%程度だ。最大500万~700万円といった枠の範囲内で借りられるが、マイナス金利下にもかかわらずローン金利は高止まりしている。
国会や日本弁護士連合会からは銀行の行き過ぎた融資拡大を問題視する声があがっている。麻生太郎金融相は3月、銀行カードローンに関し「エスカレートしているのではないかと危惧している」と答弁。安倍晋三首相も「(銀行に)貸金業法が及んでいないのは社会的責任があるからだ。しっかり対応してもらいたい」と求めていた。
厳しい風当たりを踏まえ、全国銀行協会は3月にカードローン審査の厳格化に向けた申し合わせを公表。三井住友銀行は4月から年収証明書の提出を求める融資額の基準を「300万円超」から6分の1の「50万円超」に引き下げた。三菱東京UFJ銀行も近く「200万円超」から「50万円超」に下げ、テレビコマーシャルの放映時間も限定する方向だ。
みずほ銀行は融資の上限額を利用者の年収の2分の1から3分の1に引き下げ、年収証明が必要な融資額も「200万円超」から下げる。りそな銀行はローンの種類によって「100万円超」「300万円超」としている年収証明書の基準を下げる方向だ。静岡銀行など地方銀行も追随する公算が大きい。
かつて個人向けの無担保ローン市場は消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者が主役だった。だが、多重債務が社会問題化したことで政府は2010年に改正貸金業法を完全施行。貸金業者は利用者の年収の3分の1までしか貸せない「総量規制」がかかった。
貸金業者の融資が激減する一方で、同法が適用されない銀行はカードローン事業を急拡大。マイナス金利で企業向けの貸出金利ざやが縮小し続けるなかで、安定した金利収入を確保できるためだ。ローン残高は10年3月時点で3兆2000億円だったが、16年12月には5兆4000億円と1.6倍に急増した。
銀行カードローンは自行に預金口座を保有する人向けが中心だった。毎月のお金の出入りをある程度把握できるという建前のもとで、一定額までは年収証明書の提出を求めずに迅速な融資を競ってきた。
ただ「最近は口座保有者以外への融資を伸ばしている」(金融庁幹部)。金融庁は昨年からカードローンの実態調査をしてきたが「法律や監督指針で横並びに規制をかけるのではなく、銀行が自ら考えるのが先決」(幹部)との立場だ。銀行としても対応がこれ以上後手に回れば今度は銀行界に総量規制を導入されかねないと危惧しており、自衛の措置に動かざるを得なかったのが実情だ。