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WHが原発建設の米電力2社、格付け見通し引き下げ

【ニューヨーク=稲井創一】東芝傘下の原発子会社ウエスチングハウス(WH)の経営危機が、米国の電力会社に暗い影を落とし始めた。米大手格付け会社は24日までにWHが原子炉建設を担う電力会社2社の社債の格付け見通しを引き下げた。WHの破綻懸念が台頭し、電力会社にコストの追加負担が生じる懸念があるとの理由からだ。米電力は当初の楽観論を改め、WHの不測の事態に備え始めた。

S&Pグローバルは24日、米電力会社スキャナの長期債格付け(BBBプラス)の見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」にすると発表。同じく米電力会社サザン・カンパニーの格付け(シングルAマイナス)も同様に「ネガティブ」に下げた。ムーディーズ・インベスターズ・サービスも20日にスキャナとサザンの長期債の格付け見通しを引き下げた。

スキャナとサザンはともに、WHが原子炉2基を建設する発電所を子会社などを通じて運営している。

電力会社は発電所建設などに必要な多額の資金を主に社債発行で調達する。格下げは社債発行で負担する利払いを増やし、資金調達コスト増に直結する。格下げは電力会社にとって最も避けたい事象だが、現在、スキャナとサザンはそのリスクにさらされている。

S&Pのディミトリー・ニカス氏はスキャナとサザンの見通し引き下げ理由を「東芝の財務悪化でWHによる原発建設完成の可能性が揺らぎ、リスクが増した」と指摘。ムーディーズも、東芝がWHの米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請すれば、原発建設の工程で混乱が生じてスキャナとサザンに追加コストの負担が生じる可能性があるとした。

スキャナとサザンは追加の建設費が発生した場合、WHが負担する契約を結んでいるが、東芝の財務悪化で「契約の価値が失われかねない」(ムーディーズ)という。

サザンのトム・ファニング最高経営責任者(CEO)は2月下旬の2016年10~12月期の決算を説明する電話会見で「(WHの問題で)被るコスト負担はほとんど変わらない」と、追加のコスト負担は実質的にないとの認識を示していた。WHが破産申請すれば電力会社にも多額の損失が発生することを格付け会社は懸念している。

ファニング氏は2月時点で「破綻は起こりえない」とし、スキャナも同2月に「WHから原発完成の確約を取った」との発表文を出していた。ここにきて両社は当初の楽観的な見方から、WH破綻の可能性も考慮した対処策を検討せざるを得なくなっている。米トムソン・ロイターによると、スキャナは米投資銀行デュセラ・パートナーズ、サザンは英投資銀行ロスチャイルドなどと契約し、新たな建設スキームを検討しているようだ。

スキャナは建設中の原子炉「AP1000」の知的財産権とソフトウエアを継承し、自社で原発建設を手掛ける案や、WHとは別に新たなエンジニアリング建設会社と契約することなどを選択肢にしている。

東芝の巨額原発損失が明るみが出た16年12月27日以降、3月24日までサザン株は1%高に対してスキャナ株は8%安。全米でも有数の電力会社であるサザンに対してスキャナは経営体力に限りがある。格付けも投機的等級の「ダブルB」が視野に入るだけに、WH問題の対処を誤れば厳しい状況に追い込まれる。東芝の経営危機は米電力にも試練を強いる。

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