2018年12月11日(火)

英EU離脱、強硬封印 施政方針演説に具体策なく

2017/6/21 23:06
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【ロンドン=小滝麻理子】英議会は21日に開会し、エリザベス女王がメイ首相の施政方針を読み上げた。演説では欧州連合(EU)離脱の実現を最優先するとしたが、厳しい移民制限やEU単一市場からの撤退など従来の強硬路線を封印。具体策はほとんど言及しなかった。地域政党との閣外協力もいまだに合意を公表しておらず、政権維持をめざすメイ氏の苦境は色濃くなっている。

女王の施政方針演説は、政権の重点政策や法案の概略が盛り込まれる。内閣が起草するが、国家元首である女王が慣例として読み上げる。

21日の演説は、19日に交渉を始めたEU離脱方針をどう表明するかが焦点だった。英国にとって「最良の条件」を得ることを第一に掲げたうえで、現在適用されているEU法を国内法に置き換える法整備を予定通り進めることを表明した。

ただ、EU離脱の強硬な姿勢は封印した。メイ氏が掲げてきたEU単一市場や関税同盟からの撤退は明言せず、純増数を10万人以下に抑えるとしていた移民制限の数値目標にも触れなかった。

EU離脱後の英国の将来像については「議会や地方政府、産業界とともに広範囲の合意をめざす」とし、協調姿勢を訴えた。高齢者を対象にした介護負担増など選挙公約で不評だった緊縮策も取り下げた。演説は10分程度で終わった。

メイ氏が演説でEU離脱や内政をめぐり強気の姿勢を封じたのは、8日の総選挙で敗北したことが影響している。メイ氏の与党・保守党は保有議席を318に減らし、過半数(326)を下回った。メイ氏の責任を問う声やEUとの関係を重視する穏健派の声が勢いを増している。

英世論はEU離脱でおおむね一致しているが、具体的な離脱方法では割れる。肝心な各論をぼかすことで、与野党の反発を避けたい本音もにじんでおり、メイ政権の弱さが垣間見えた。政権ナンバー2のハモンド財務相は20日「EU離脱で最優先すべきは雇用と景気だ」と語り、強硬な離脱姿勢に疑問を呈した。英メディアも「非常に具体性を欠いた」(BBC)と演説内容を評した。

メイ政権にとって当面のヤマ場は、演説内容の是非をめぐる議会採決(29日)だ。演説内容が過半数の支持を得られるかどうか、メイ政権の事実上の信任の場になる。

保守党は過半数の勢力を形成するために、10議席を持つ北アイルランドの保守系政党、民主統一党(DUP)と閣外協力の協議を進めている。だが、協議は遅れており、女王演説の当日も政権の枠組みは見通しがたっていない異例の事態だ。

現時点で両党は29日までに閣外協力で合意し、女王演説は可決されるとの見方が多いが、メイ氏がDUPに振り回される状況が際立つ。

メイ氏が6月中に無事に政権を発足できたとしても、保守党重鎮らの離脱強硬派と、選挙後に勢いづく穏健派の板挟みとなり、離脱戦略が定まらない恐れもある。2019年3月までのEUとの離脱交渉期間を空費しかねず、離脱の道のりは不透明さを増している。

メイ氏は求心力低下にも歯止めがかからない。大勢の犠牲者を出した14日のロンドン住宅火災では、被害住民をすぐに慰問しなかったことへの批判が殺到。直後の世論調査は、労働党の支持率が保守党を上回り、保守党内でもメイ氏の指導力を疑う声が強まっている。

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