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米大統領候補の内向きな姿勢を憂う

米国の大統領選を眺める日本とアジア各国の視線は不安に満ちている。米国の国民感情が孤立主義的なムードに傾き、政治の関心が急速にアジアから離れている現実を敏感に感じ取っているからだ。

共和党の最有力候補であるトランプ氏の日本、中国、韓国への批判では、認識の浅さが目立つ。「中国の為替操作によって米国の雇用が奪われている」というのは言い過ぎだ。日本市場の閉鎖性に何度も言及しているのも理解に苦しむ。日韓との同盟関係について「公平な取り決めではない」と決めつける発言は看過できない。

民主党のクリントン氏は、昨年10月に合意した環太平洋経済連携協定(TPP)を支持しない立場を示した。この協定は世界経済の成長の中心となったアジア太平洋地域に、米国主導で共通ルールに基づく経済秩序を築くオバマ政権の「アジア回帰政策」の柱だ。

クリントン氏も国務長官として自ら関わってきた。米国の国益を利さないとしてTPPに反対を唱えるのは自己矛盾といえる。

選挙戦の発言一つ一つに目くじらを立てる必要はなかろう。だが問題は、こうした候補者のアジア軽視や強硬な発言が支持される米国内の政治的な土壌である。

アジアの経済発展が米国の雇用を脅かしている、という誤った認識が米国民の間に広がっている。現実には多国籍化した米企業がアジア地域に拠点を広げ、国際分業を進化させていることが米国経済を支えている。米企業の競争力と収益を高める自由貿易こそ、米国の国益の基盤であろう。

だれが大統領になっても世界の現実に直面せざるを得ず、外交政策の極端な変更は考えにくい。しかし、米国民の内向き感情が米国の対外関与が薄れる予兆だとすれば、アジア内の政治・経済的な秩序に影響を及ぼす可能性もある。

中国はすでに覇権国としての路線を歩もうとしているようにみえる。だが日韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々は、安全保障や経済の面で米国の域内での強い存在感を必要としている。

米国も、アジア太平洋の広い舞台で域内各国と共存共栄を目指すのが国益であるはずだ。どんな主張の候補者を指導者に選ぶかは米国民の判断だが、内向き志向を強める米国に対し、地域への積極的な関与の意義を説き、強い絆を維持するのは日本をはじめアジア各国の政治指導者の責任である。

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