競争力ある農漁業へ改革を緩めるな

2016/4/7 3:30
保存
共有
印刷
その他

日本の農漁業が抱える問題の根幹には、国内市場しか見ない内向き志向と競争を避ける横並び体質がある。

政府・与党は環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に向け、農漁業経営の大規模化など「攻め」の姿勢を打ち出す。だが、改革は緒に就いたばかりだ。手を緩めず、競争力を強化してほしい。

規制改革会議の作業部会は3月末、牛乳やバターなどの原料に使う生乳の流通改革を提言した。原則として指定の生産者団体に出荷しなければ補助金をもらえない現行制度を改め、生産者が自らの経営判断で販売先を選べる環境を求めた。

当然だ。現行制度が制定された50年前から飲食料市場は大きく変わった。硬直的な制度は需要の変化に追いつけず、生産者の所得拡大を妨げている。

半世紀も続く制度はさまざまな既得権益を生み、改革を阻む「岩盤」となった。酪農家から生乳を集荷する指定団体以外の企業や、そこに出荷する酪農家が「アウトサイダー」と呼ばれる現状がその象徴だ。

農業協同組合制度を60年ぶりに抜本改革する改正農協法は今月施行された。ただ、農家の所得向上と農業生産の拡大に役立つ組織に変わるためには農協自身の意識改革が欠かせない。

政府や自民党は、農薬の価格が農協間で最大2倍の差があることや農業機械が海外に比べ割高な実態を、国内の生産コストが高止まりする要因として問題視する。資材や機械を少しでも安く農家に提供しようとする農協の努力が欠けていたことは否めない。

漁業の制度改革は農業より遅れている。農林水産省の統計によれば、2013年時点で9万4507ある経営体は、零細な個人経営が95%を占める。沿岸の海域や漁法ごとに細分化された漁業権と、それを漁業協同組合などが優先的に利用できる仕組みが大規模な法人化や企業参入を阻んでいる。

昨年の農林水産物輸出額は7452億円と過去最高を記録した。それでも農業先進国のオランダの農産物輸出額(12年で約10兆円)に比べると13分の1にすぎない。

農業と企業が連携して海外市場を開拓してきたオランダと、内向き志向で生産額を減らした日本の差は大きい。魅力ある農漁業に変えるために、生産者保護を重視するやり方を大胆に見直すべきだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]