新風 Silicon Valley(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

成功の鍵「ピボット」 スラックとミクシィの共通点
校條 浩(米ネットサービス・ベンチャーズ マネージングパートナー)

2016/4/8 12:00
共有
保存
印刷
その他

 日本の著名なゲーム企業、任天堂、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ミクシィの共通点は何か。それは「ピボット」して大成功した会社だということだ。ピボット(Pivot)とは、事業を根本的に転換することである。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

 任天堂はトランプのメーカーだったが、家庭用ゲーム市場を開拓して大化けした。DeNAはネットオークションで苦労が続いた。途中で携帯ゲームを開発し爆発的な成長をした。ミクシィはもともとはネット求人広告の会社で、ブレイクしたのはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を始めてからだ。その事業も米フェイスブックに押され存続の危機となったが、スマホゲームで見事に復活した。

 自社が計画した事業が順調に成長すればピボットをする必要はない。最初に手がけた事業が全力を尽くしてもダメだった時、次の事業に果敢に挑戦する――。それがピボットだ。シリコンバレーのあるベンチャーキャピタルによると、成功した投資先企業の95%がピボットを経験しているという。ピボットと言えば聞こえがいいが、要は事業の失敗だ。ベンチャー企業の場合は、資金が枯渇して倒産寸前の場合も多い。社員を解雇することもしなければならない。

 今、「スラック(Slack)」というグループ・コラボレーション・ツール(法人向けチャットサービス)を提供しているベンチャー企業が急成長している。製品名と同じ名前のこの企業は、わずか2年でユーザー数100万人を突破した。法人分野でのこの急成長は破格だ。企業価値はすでに1000億円を超えた。

 創業者のスチュワート・バターフィールド氏はマルチ・プレーヤー・ゲームの会社を設立したが、そのゲームは全く売れなかった。白旗を揚げ、従業員を解雇したのは断腸の思いだったという。ただ、資金を使い切る前に決断したので、新事業を作る余力はまだあった。

 ゲームの開発作業を円滑に進めるためのコラボレーションツールを探したが、満足いくものがなかった。そこで自社開発したのがスラックの原型だ。それを商品化することを決め、試用版をユーザーに使ってもらいながら徹底的に改良をくり返した。ゲーム開発という最先端の業務プロセスから生まれたので、グループチャットやアプリケーション連携など、時代を先取りするツールとなった。

 彼が創業したのはこの会社が初めてではない。しかも最初の会社もピボットして成功させたのだ。彼が最初に起業したのはオンラインゲームの会社だった。鳴かず飛ばずだったので、ゲームのために開発した写真の共有ツールを切り出してサービス事業に衣替えした。それが写真保管・整理サービスの代名詞となっているフリッカー(Flicker)である。後に米ヤフーに買収されている。

 ピボットの大前提は「失敗を認めること」である。失敗を認めることによって、再び事業創造にチャレンジできる。日本では、失敗を潔しとしない風潮がある。予想通りの事業進展が見られないと、運営コストをカットして失敗を先送りする。これではゾンビ事業が存続するだけだ。行政のベンチャー振興策がなかなか成果を生まないのもピボットが許されないからだ。

 事業転換を失敗とは呼ばず、あえてピボット(転換)と呼ぶところにシリコンバレーの知恵がある。転換なら再チャレンジが可能になる。

[日経産業新聞2016年4月5日付]


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

新風 Silicon Valley(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

校條浩氏の「新風 Silicon Valley」

【PR】

新風 Silicon Valley(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

スマホを使う人たち(東京・銀座)

スマホアプリの利用者獲得がなぜうまくいかないのか

 消費者を直接の顧客とする企業は、スマートフォン(スマホ)のアプリの急速なはやり廃りを目の当たりにしてきた。アプリのユーザーを獲得するには費用がかかる。しかも、そのためのキャンペーンがうまくいかないこ…続き (9/15)

事業会社のベンチャー投資を成功させるには

 新事業創造や企業変革を進めたいという意識を持つ企業は、シリコンバレーのベンチャー企業と真剣にかかわろうと模索している。自社の資金をプールしてベンチャー投資を行う、コーポレート・ベンチャーキャピタル(…続き (9/8)

起業家育成プログラムにも多様な人材が集まる(2016年8月、神戸市)

オープンイノベーションで忘れがちな「縦の多様性」

 日本だけでなく、世界中でオープンイノベーションの取り組みが活発に行われている。大企業とベンチャー企業(VB)との交流会、新規事業のアイデアを出し合うコンテストの「アイデアソン」、社内ベンチャーなどだ…続き (9/1)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

09月20日(水)

  • インテルとWaymo、完全自動運転の実現を目指して協力
  • 触って感じた「iPhone X」第一印象―「iPhone 8/8 Plus」とどう違う?
  • グーグルも交えて大混戦、通信・メディア再編の鍵は映像とモバイル

日経産業新聞 ピックアップ2017年9月20日付

2017年9月20日付

・香港のIT企業「オクト3」、電子コインで資金調達
・キャトル、試供品、狙った顧客層に配布
・日本バルカー、複数用途対応のグランドパッキン販売
・鉄鋼、旺盛な需要下で相次ぐ設備トラブル
・低コストの宅配ロッカー、ウィルポート 外部電源不要に…続き

[PR]

関連媒体サイト