温暖化対策の実効性高める議論を重ねよ
経済産業省と環境省合同の有識者会議が地球温暖化対策計画案をまとめた。日本は2030年に13年に比べて温暖化ガスを26%減らすと世界に公約している。温暖化対策計画は約束を果たす具体策となる。省エネの徹底や発電部門の低炭素化などを盛り込んでおり、計画の方向性には同意する。
しかし中身は施策を並べたリストにすぎない。これをマスタープランにして、より具体的で実効性のある策を練り上げ実行に移してほしい。
26%削減には、温暖化ガスの排出が増えているオフィスや一般家庭での省エネの徹底が不可欠だ。効率が高い発光ダイオード(LED)照明やエコカー、断熱構造の住宅などのさらなる普及が求められる。それには国民が広く温暖化対策の重要性を理解し、商品選択の基準にしなければならない。
また再生可能エネルギーや原子力を現状より拡大する必要があるが、コストや社会的な受容性の面でともに弱点を抱える。こうした難しい課題をどう克服するのか。踏み込んだ議論と対策が要る。
温暖化対策を経済成長と両立させるには、個々の対策の費用対効果をみて、ムダなお金を使わないことも肝要だ。
計画案には、50年までに現状に比べ温暖化ガスを80%減らす長期目標も盛り込んだ。
日本は主要国首脳会議(サミット)などで先進国が50年までに80%程度の削減を果たすことに同意してきた。昨年12月には、日本も参加した国連の会議で、世界の温暖化ガス排出を大幅に減らす「パリ協定」が採択された。
長期目標は、日本政府がこれまで国際交渉で一貫して示してきた考えに沿うものであり、計画に明記するのは妥当だ。
ただ現時点では、この目標を達成する具体的な手立てに見通しがたっているわけではない。その点で、確実な達成を目指す「30年に26%削減」とは違い「努力目標」の色合いが濃いといえる。
従来の技術や政策だけでは達成は難しい。革新的なエネルギー技術の実用化、経済社会の仕組みやライフスタイルの転換が要る。化石燃料の消費を抑える炭素税や、温暖化ガスの排出枠を売買する排出量取引制度について導入の是非を検討する必要がある。
長期目標をぶれずに掲げつつ、社会の仕組みを大きく変えるイノベーションを促すのが望ましい。