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悲劇の教訓 未来へ 防災教育、実践力が鍵

歩みは続く(4)

2月下旬、宮城県多賀城高校(多賀城市)での特別授業。「こんな簡単な道具で本棚が倒れないの?」。生徒が部屋の小さな模型を取り囲み、家具の転倒を防ぐ「突っ張り棒」を手にしながら首をかしげた。

大学教授から揺れに強い家具の配置を学ぶ生徒(宮城県多賀城高校)

高校に専門学科

大学教授の指導のもと、生徒は自分たちで家具を固定する道具を作り、地震の際に揺れにくい家具の配置を話し合った。同校1年の瀬戸里奈さん(15)は「家に危険なところがないか、帰ったら家族で点検したい」と語った。

多賀城高は東日本大震災後、防災教育に力を入れるが、4月から「災害科学科」を創設し新入生40人を受け入れる。高校での防災専門学科は、阪神大震災を経験した神戸市の兵庫県立舞子高校に次いで全国2例目だ。

多賀城市では188人が犠牲になり、面積の3分の1が浸水した。多賀城高の佐々木克敬教頭(52)は「震災の教訓を次世代に伝え、災害から命と暮らしを守る人材を専門的に育成する必要がある。医療従事者や研究者、建築士など多分野にわたる卒業生を輩出したい」と話す。

震災では初期対応や避難のあり方に様々な苦い教訓を残した。被災地ではその教訓を教育に生かす取り組みが進む。

「2050年代、大人になった君たちが巨大災害にどう対応できるのか」。宮城県南三陸町の歌津中学校は、生徒たちが街の自治会などで中心的役割を果たす時期を想定した独自の防災訓練を続けている。

訓練では丸1日かけて自宅から中学校への避難方法、炊き出し、避難所の運営などを学ぶ。歌津地区は住民119人が犠牲となった。同中学の防災主任、及川敦教諭(52)は「被災した生徒は訓練の顔つきが違う。だが十数年後、震災を知らない世代が中学生になった時、防災教育の内容はどうすればいいのか。その時が正念場だ」と語る。

犠牲ゼロの意識

防災教育の重要性は、震災時の岩手県釜石市で実証されている。釜石では約千人の犠牲者が出たが、小中学生のほとんどが迅速に避難して無事だった。日ごろから学校で「津波が来たら逃げる」ことを徹底されていたためだ。

釜石市の防災教育に携わった群馬大の片田敏孝教授は「津波を正しく恐れ、その時にしっかりと避難することがその地域に住む人の『作法』。一人の犠牲者も出さないという意識を今後も継承しなければならない」と指摘する。

自分たちの命は自分たちで守る――。災害時、地域や職場の防災活動の担い手として期待されるのが「防災士」。阪神大震災の経験から03年に創設された防災士はNPO法人「日本防災士機構」(東京)が認証する民間の資格だ。

東日本大震災をきっかけに資格取得者が増え、昨年11月に10万人を突破した。東北福祉大(仙台市)の養成講座は学生や主婦らの申し込みが多く、年3回の講座はいつも定員(各100人)オーバーの人気ぶりだ。

ただ「いざ」という時の対応力が本当にあるのかとの声も上がる。自治体職員や企業の担当者らに災害時の実践的な対応を教えている岩手大の越野修三教授は「資格を持っているだけで災害時に役立つ人材とは限らない」と指摘する。

越野教授は震災当時、岩手県庁幹部として災害対応を指揮した。「指定避難所の公民館が浸水したり、自治体職員や民生委員が犠牲になったり、実際は訓練通りにはいかない。情報不足のなかでも意思決定できるリーダーシップを持った人材を育てなければならない」と提言する。

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