自宅で週末断食、注意点は 水分取り適当な運動を

時間もお金もかけず、家でもできることから広まる「プチ断食」。医学的な定義はないが、1~2日ほどの間の数食、固形の食べ物を取らない方法を指す。何も食べないのとは異なる。
体重を減らしたくて取り組む人が少なくない。だが、注意してほしいのは「断食後に体重が落ちるのは、軽い脱水で水分が減っているから。直後のダイエット効果は小さい」と、断食に詳しい横浜クリニックの青木晃院長は指摘する。
ダイエットに関していえるのは「空腹を体験すると、脳の満腹中枢が満足したと感じるためのポイントが下がり、食事量が減るので、いわゆる『胃が小さくなる』状態になりやすい」(青木院長)こと。すると過食しにくくなり、長い目で見れば減量につながる。
便通よくなる
断食の効果として最も実感しやすいのが便通改善だ。「腸の中を空っぽにすることで、ぜん動運動を促すホルモンなどが分泌され、溜まった便が出る」と便通に詳しい東邦大学医療センター大森病院・総合診療科の瓜田純久教授は説明する。
一方、交感神経と副交感神経からなる自律神経にも働きかけるという。胃酸分泌や腸の運動など、食べ物の消化に関わるのが副交感神経。飢餓を感じると交感神経が働き、代わりに副交感神経は休むことができる。過食などで乱れていた交感、副交感神経の働きのバランスが整えば、疲労感や睡眠障害などの改善にもつながるという。
様々な効果が期待できるプチ断食だが、してはいけない人もいる。

瓜田教授は「BMI(体格指数)が18.5未満の『やせ』の人や成長期の子どもは厳禁。また、断食中は脱水しやすいので、脳梗塞の既往がある人、動脈硬化などで血管が詰まりやすい人も避けたい」と指摘する。「仕事が忙しいときや、ストレスが多い時期は断食でストレスが大きくなり過ぎる。イライラして苦痛が多く、体調を崩しやすいのでやめた方がいい」(青木院長)という。
徐々に通常食に
上手にプチ断食するにはどうしたらいいのだろう。週末の数食分だけ固形物を食べないのが効果も実感しやすいという。
断食で最も重要なのが、断食前後の食事。緩やかな助走とソフトランディングが必要で、これから断食だからといって、直前に肉を大量に食べてはいけない。「断食前夜のお勧めは脂肪分の少ない軽めの和食。アルコールや刺激物、喫煙も避けて」と青木院長。
翌朝はおもゆや具のないみそ汁、ヨーグルトなどを取り、その後は2日目の夜まで具のない汁物、野菜ジュース、ヨーグルトにする。固形物は2日目の夜、通常の半量を。量は体格によるが、普段、毎食茶わん1杯のご飯を食べているなら、それが通常量となる。

断食の時間が長ければ長いほど、胃腸の消化力は落ちる。瓜田教授は「低栄養状態の人が急に栄養を摂取すると、体内で電解質のバランスが崩れ、問題が起きることもある。ドカ食いで負担をかけないよう、病院の回復食のように段階を経て通常食に戻すのが大切だ」と指摘。よく噛むことを忘れないようにする。
断食中にはこまめな水分摂取が欠かせない。普段食べる食事には、汁物以外にも1リットル近い水分が含まれている。その分も含め、1日2~2.5リットルの水分を取りたい。
断食中は、食事誘発性熱産生という消化吸収で作られる熱エネルギーができないため、冷えを感じる人も多い。それを防ぐには、散歩などの軽い運動が効果的だ。体内の脂肪の燃焼も促されるので、体脂肪を減少させる作用もある。冷え防止には、入浴もいい。断食専門施設の中には、温泉設備を完備したところもある。ただし入浴の際は、前後に水分補給を。
「空腹による吐き気などは徐々に治まる。気になるなら、グレープフルーツやバニラの香りが心を落ち着けるのに役立つ」と青木院長。
体質改善などのためには、プチ断食を定期的に繰り返すのが効果的とされる。「月に2回、3カ月ほどで体の変化が実感できる。それ以降は、月1回、2カ月に1回と間隔を広げてもいい」と青木院長は話す。
◇ ◇
夕食を抜くだけから始めてみては
仕事などで夕食時間が遅くなりがちな上、食べ過ぎる傾向にある現代人。「週1~2回、夕食を抜くだけでも、便通など体調の改善に役立つ」と対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座の看護師、斉藤早苗氏は話す。
本来、何も食べない睡眠中の8時間程度の間に、胃腸は消化吸収をし、残さを大腸へ移動させる。空っぽの所に朝食を食べると、胃直腸反射で便意をもよおす。しかし、夜遅くに食べているとリズムが狂う。「夕食抜きでリズムを戻すことも可能。一方、食事量の抑制にもなり、ダイエット効果も期待できる」(斉藤氏)。夕食抜き断食が食習慣を変えるきっかけになるかもしれない。
(ライター 武田 京子)
[日経プラスワン2016年2月27日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連キーワード