/

銀行の金庫室でシェア7割 広島発「鉄壁の守り」

熊平製作所、セキュリティー事業も拡大

誰もが気軽に立ち寄れる銀行にも、一般人は決して入れない部屋がある。顧客から預かった現金や有価証券、外部流出が許されない重要な機密書類などを管理する金庫室だ。金融機関の信頼性をあらわすシンボルとも言える。熊平製作所(広島市)は銀行向けの金庫室設備で国内シェア7割を占めるトップ企業だ。

扉の厚さ100センチ

広島市にある熊平製作所のショールーム。様々な製品が並ぶ中、ひときわ目を引くのが部屋の奥にある大型の金庫扉だ。1966年にある都市銀行の本店に納入されたもので、厚さ100センチメートル、重さは35トンある。当時は「東洋一のマンモス扉」と呼ばれた。巨大な金庫扉が放つ重厚感はまさに「鉄壁」を思わせる。

熊平は明治時代に創業した。金庫の卸売りや修理を手掛け、戦後に金庫扉などの製造を本格的に始めた。今では政府系銀行から信用金庫、農協などほぼ全ての金融機関で熊平の製品が使われている。創業から約120年、金庫業界に携わる同社は業界をリードする製品を多く生み出してきた。

熊平の製品の強みは頑丈さにある。代表製品には「クマヒラアロイ」という独自開発の特殊合金を使っている。高温に弱い鉄や硬度が低いアルミなどと比べ、窃盗団などが使うガス溶断機や電動ドリルといった破壊工具に強い耐性を持つ。63年の開発以降、製品の防御性能が飛躍的に高まり、シェア拡大の原動力になった。

火災時の高熱の中で金庫内の物品を保護する耐火性の技術も群を抜く。自社の耐火試験炉を活用し、約1000度の高温で2時間ほど放置されても金庫内の温度が保てるか、急な温度上昇や落下などの衝撃にも耐えられるか試験する。火災やガソリンスタンドの爆発といった、過酷な現場にも耐えられるのが売りだ。

評価をさらに高めたのが、95年の阪神大震災だった。「震災時に発生した長時間の火災の中でも、熊平の耐火金庫は中のものが燃えていなかった」と、諏訪正照社長は振り返る。

2011年の東日本大震災では、津波で店舗が崩れても金庫室だけは残り、保管物に大きな被害は出なかった金融機関もあったという。

IT対応も強み

「金庫のクマヒラ」として知られる同社だが、オフィスビルなどのセキュリティーゲートや入退室管理システムなど、IT(情報技術)を活用したセキュリティー製品でも高いシェアを誇る。インターネットや電子マネーの普及に伴い「守るべき対象が現金などの現物から、情報や人々が過ごす空間に変わってきた」(諏訪社長)といい、00年以降は顧客ニーズの変化を捉えた事業分野への進出を強化してきた。

20年の東京五輪を控え、国内のセキュリティー需要は今後ますます高まると見ている。熊平もセキュリティー分野を成長事業と位置づけ、電子回路やソフト開発の技術者を増やすなど、開発体制の強化を進めている。

(広島支局 佐藤亜美)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン