2019年8月19日(月)

春秋

2016/2/21 3:30
保存
共有
印刷
その他

ベストセラー小説「氷点」をもじったという演芸番組「笑点」は、5月で放送から半世紀を迎える。中村八大さん作曲のオープニングのテーマも、今聞けば懐メロっぽい。大喜利では多くの落語家が異彩を放ったが、なかでも印象に残る一人が三遊亭小円遊さんである。

▼キザを売り物に、桂歌丸さんとの応酬がお茶の間を沸かせた。実は小円遊さん、古典落語への志向が強く、高座でもキザを求められることに戸惑っていたようだ。作家の小林信彦さんは酒席で悩みを聞かされ、著書に「杯を手にした雰囲気が異常である」と記した。ギャップに悩み酒に頼って、1980年、43歳で没した。

▼キザで言えば、英語教育に詳しい鳥飼玖美子さんも新著でこんな話を紹介している。中学の英語の授業で、ある生徒がfishを完璧に発音したところ、仲間から「どうしたんだ、キザな発音して」とからかわれた。生徒はすぐ「フィッシュ」と日本語風に切り替えた。日本人中学生としての仲間意識を優先させたのである。

▼自らに正直な行動をするか、本心を抑え、周りの期待に応えるかという選択は時にアイデンティティーをかけた飛躍を伴う。心の専門家は「プラス面ばかり見てマイナス面を見ないと、空疎な理想主義に陥りやすい」と戒める。つらつら世を見ると、個人だけでなく、組織や国にも例が見える。胸に留めるべき教えだろう。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。