2019年8月25日(日)

おいしさ数値化で「地域や年齢つかむヒット商品を」
おいしさの科学研究所・山野理事長

2016/2/18 3:30
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一般社団法人おいしさの科学研究所(高松市)は食品の味や匂い、食感といった要素を分析して「おいしさ」を数値化する研究に取り組んでいる。おいしさを客観的に評価できるとして、地元の飲食業者だけでなく大手食品メーカーも足を運ぶ。研究を続けてきた理事長の山野善正(77)は「日本の食の輸出強化にもつながる」と意義を語る。

やまの・よしまさ 1938年(昭13年)滋賀県近江八幡市生まれ。63年京都大学農学部卒、東洋製缶入社。68年香川大学に。教授、評議員、農学部長などを経て2001年退職。03年おいしさの科学研究所設立。独自の認証マークや鑑定士制度も手掛ける

やまの・よしまさ 1938年(昭13年)滋賀県近江八幡市生まれ。63年京都大学農学部卒、東洋製缶入社。68年香川大学に。教授、評議員、農学部長などを経て2001年退職。03年おいしさの科学研究所設立。独自の認証マークや鑑定士制度も手掛ける

品質や栄養成分など数値化できる要素とは違い、おいしさには明確な基準がない。数値によって一定の基準のもとに評価することができれば、企業の商品開発に役立てられる。

人の好みは育った環境や年齢などによって違う。軟らかさや酸味、香りなど数値上のバランスを整えても、それだけでおいしい商品になるわけではない。山野は「全ての人が好きな商品は作れないが、特定の地域や年齢の消費者に好まれるヒット商品は生み出せる」と自信をみせる。

学生時代から研究者を志していた。だが指導教授が退職し、進路先に考えていた研究室も廃止された。大学を出て東洋製缶に入り、横浜の名物として知られる崎陽軒のシューマイを真空パックした商品の開発などに関わった。「ヒット商品を求める仕事にやりがいを感じていた」が「食品の基礎研究をしたい」という思いもあった。

入社から数年が過ぎた頃、香川大学から山野に声がかかった。研究者を志していたことを知っていた学生時代の恩師らが推薦した。当時は瀬戸大橋の開通前であり、香川は「遠い」と感じてためらいもあった。だが、家族の後押しもあり研究者の道を歩むことを決めた。

着任して取り組んだのが当時はまだ珍しかった「テクスチャー」と呼ばれる、おいしさを食感や見た目、音、温度といった物理的な尺度で分析する研究だった。当初は10年程度で香川を離れると思っていたが、研究の楽しさから、気がつけば30年以上勤めていた。

教授や農学部長を経て、任期を1年残して退職した。研究の成果をまとめた書籍の出版や食品メーカーの顧問になることなどを考えていたが、知人で南海プライウッド社長だった丸山修から「研究所を設けてみないか」と誘われた。同社や加ト吉(現テーブルマーク)など地元企業からの支援を得て、おいしさの科学研究所を設立した。

研究所では大学時代に研究したテクスチャーに、味や匂いを加え総合的においしさを評価し数値化する事業を進める。甘みや苦みなどの分析には味覚センサーを使う。企業からは食品の解凍方法によるおいしさの違いや、コメの炊き方による違いなどの分析を依頼されている。一定の基準で判断できるよう訓練する独自の鑑定士制度も作り、機械による分析を補っている。

山野が現在構想しているのが、地域別の嗜好調査だ。海外を含めた各地域で、現地の住民に好まれる味を分析。データ化することでその土地に合った商品開発に生かせるとみる。

インバウンド(訪日外国人客)の増加や環太平洋経済連携協定(TPP)を追い風に、海外での和食人気が高まることが期待される。山野は科学的な視点で和食振興を後押しする。

=敬称略

(高松支局 北本匠)

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