洋服の青山、サイト誘導するとリアル店員の評価に

2016/2/20 12:00
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青山商事がスーツ店「洋服の青山」の電子商取引(EC)サイトのサービスを充実させている。着こなしの相談を電話で受け付けるほか、商品の当日発送などを始めた。ECでも実店舗での買い物体験にできるだけ近づけることで、店舗とECの両方を使うファンを増やす。

ECサイトを使う人は店舗も頻繁に訪れる

ECサイトを使う人は店舗も頻繁に訪れる

「店舗かECかの違いはあっても消費者が商品を購入することは同じ。だったらサービスは同水準でなければならない」。EC事業部の石矢浩部長は力を込める。

同社が洋服の青山のECサイトを開設したのは2008年秋。当初は店舗の品ぞろえや顧客を補完する役割をECに求めていた。

だが、顧客の購買動向を分析したところ、ECを使う人は店舗も頻繁に訪れていることが判明した。店舗とECを一緒に底上げする戦略にかじを切った。

まず取り組んだのが12年のECサイトの全面リニューアルだ。システム上の理由で対応していなかったスーツの2着目半額などのセット割引をECでも始めた。店舗と別々だったポイントも共通化した結果、ECの売り上げが急拡大した。石矢部長は「サービスを店舗と同じにすることの大切さがよくわかった」と話す。

15年からは実店舗により近づくためのサービスを展開した。4月に始めた商品の当日発送は依頼があれば、自社の物流センターでスーツを裾上げして発送する。早ければ翌日に商品が届く。突然の訃報などでも対応できるため、礼服の注文も多いという。

昨秋に始めた「コンシェルジュサービス」は年中無休で電話で顧客の相談に応じる。店舗での接客経験を持つスタッフが着こなしのアドバイスやサイトの使い方などに対応する。1日当たり10数件の問い合わせがある。今後はインターネットを使ってチャット形式で顧客の相談に応じることも検討している。

店頭でも顧客にECの利用を促す。各店舗ではECで使えるクーポン券を従業員が配り、店舗に来店した顧客に自社のECを紹介している。クーポン券を使ってサイトで買い物をした顧客の売り上げは、配布した従業員の売り上げに加算され、人事評価の対象となるようにもした。

売り上げ目標を課せられた店舗にとって、同じ社内とはいえECへ顧客が流れる不安は根強い。石矢部長はECの売り上げを人事評価に反映させる仕組みを導入した理由について「ECに対する会社の本気度を理解してもらうため」だと説明する。

一般的にアパレル企業がECサイトで売り上げを伸ばせない理由の1つに社内の対立がある。実店舗とEC部隊が互いに売り上げを取られまいと、販促をやるにも、社員は別々の方向を向いてしまう。青山商事の幹部はECをよく使う人は店舗への来店頻度も高いことを示したデータを何度も見せて社員を説得した。

青山商事の14年度のECサイトの売上高は10億円。17年度には40億円まで引き上げる計画を掲げる。年々売上高を伸ばしているが全売上高に占める割合はごくわずかにとどまる。

小売り各社はネットと実店舗を連動させるオムニチャネル戦略に力を注いでいる。青山商事はサイトの質を高めた今後は顧客が店舗とECを行き来する好循環を目指すため、店舗を優先しがちな社員の意識改革を粘り強く続ける考えだ。(池田将)

[日経MJ2016年2月17日付]

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