ネットに接客のよさ イオン、新ECサイトの狙い

2016/1/30 12:00
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イオンが昨年12月、グループ統一の電子商取引(EC)サイト「イオンドットコム」を開いた。11月に「オムニセブン」を設けたセブン&アイ・ホールディングスに続く動きだ。だが、2社の狙いはそれぞれ別のところにある。主に物流面での強みをネットでも生かすセブン&アイ。それに対しイオンが狙うのは、ネットを使った店舗の運営手法の転換だ。

イオンはタブレット端末を使い、店頭にない商品の販売を強化している(東京都板橋区の店舗)

イオンはタブレット端末を使い、店頭にない商品の販売を強化している(東京都板橋区の店舗)

イオンドットコムには食品や酒類、衣料品、靴、化粧品、書籍、ペット用品などECサイト29店の商品が並ぶ(1月26日時点)。それまで個別に運営していたサイトを1カ所に束ねた。イオンは品目数を明らかにしていないが、食品スーパーの「マックスバリュ」などグループのサイトを順次取り込み、早期に数百万品目にする。

合わせて総合スーパー(GMS)の売り場にはタブレット端末の設置を進めており、既に約300カ所に配備済み。店頭の数倍~数十倍の品ぞろえをウェブ空間で実現し、店頭にない商品も販売員が案内する。

店頭在庫の圧縮にもつなげる。家具やカーテン、靴など、色やサイズが豊富なものは全ての種類を店頭にそろえると余剰在庫の元になる。店頭には接客に必要な最低限のサンプルを置き、ネットで購入してもらえば店頭での品出し作業なども減らせるとの考えだ。

セブン&アイは約1万8千店ある国内最大のコンビニエンスストア網を物流拠点とみなし、店頭受け取りや無料返品サービスでアマゾンなどに対抗している。だが、イオンは家や職場に近い小型店網が少ないため、同じ土俵で戦っても太刀打ちできない。

そこで、イオンはネットを使い「接客の付加価値が出せる店にしていく」(イオンリテールの岡崎双一社長)方針だ。ECは品ぞろえは増やしやすい半面、商品数が膨大になり「掘り出し物」などを見つけにくい。イオンは販売員が来店客に欲しいものや探しているものを聞き、その人に最適な商品をECから見つけてお薦めできる体制を整えようとしている。

チェーンストアはセルフサービスでの販売を前提に、非熟練労働者による大量販売で成長してきた。接客を前提に、店頭で手にとったり見たりできない商品を納得してネットで購入してもらうには、高い技能や知識を持つ販売員を一定数、採用・育成しなければならない。

当然、高度な人材を採用すれば人件費も膨らみかねない。だが、イオンにはそのリスクを抱えてもネットと実店舗の融合をやらなければならない理由がある。

営業利益の8割をコンビニが稼ぐセブン&アイに対し、イオンはデベロッパー事業と総合金融事業が8割を占め、主力のGMSは赤字が続く。ネットの影響はすぐに消費する商品が多いコンビニよりも、商圏が広いイオンなどの大型店のほうが受けやすい。手をこまぬいていればアマゾンなどに客がどんどん奪われてしまう。

イオンは傘下に300超の企業を抱える。食品スーパーやドラッグストアのほか、衣料品や靴、酒類、遊戯施設、ペット関連などの専門店も多い。新たなECサイトに競争力を持たせるためには、そうしたそれぞれの専門店が持つ専門的な商品知識や接客技能を、GMSに移植していく必要もありそうだ。

来店動機になり得る店頭接客の実現は相当に難しい。だが、消費者がECでの無機質な消費に慣れるほど、実店舗での接客の良さを認めてもらいやすくなる。イオンに限らず、小売業は自社の事情に合わせてネットを活用する必要に迫られている。(中川雅之)

[日経MJ2016年1月27日付]

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