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アマゾンが半導体製造 米ネット企業の垂直統合戦略

フィル・キーズ(米ブルーフィールドストラテジーズ アナリスト)

米国のコンピューティング業界の構造は簡単だった。半導体メーカーは半導体を製造し、ソフトウエア企業は半導体上で動作するソフトウエアを開発する。コンピューター製造者はそれらをコンピューターにして製品にする。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

今、この構造は基本的に崩れたようにみえる。米アマゾン・ドット・コムは1月6日、イスラエルの半導体メーカーのAnnapurna Labsの半導体を発売したと発表した。アマゾンはAnnapurnaを15年1月に3億7000万ドル(推測値、約444億円)で買収している。同社の半導体は、インターネットと接続するためのホームゲートウエイや無線LANルーター、データ保存装置などに使われている。

アマゾンは電子コマースサイトを運営している企業だ。なぜ半導体メーカーを買収し、その企業の半導体を販売するのか。

アマゾンは数年前からタブレット端末やテレビのセットトップ・ボックスといった自社製の家電製品も販売するようになっている。

アマゾンはこうした製品を販売することで収益を得るだけでなく、アマゾンが提供している動画や音楽コンテンツを再生する役割を持たせている。Annapurnaの半導体製品はアマゾンの家電製品に採用されるとみられる。この製品を一般市場にも販売すれば量産効果が働いて製造コストが下がる。そうなればアマゾンもコストダウンの恩恵を受ける。

別の狙いもある。アマゾンはクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」も手掛けている。近いうちにAnnapurnaの半導体製品は、AWSのコンピューティング装置に採用されるだろう。ここでも量産効果によるコストダウンの恩恵が及ぶ。

実はこうした動きはアマゾンに限ったことではない。

ソフトウエア開発会社である米マイクロソフトや米オラクルも半導体製品を製造している。米グーグルは10年4月に半導体メーカーの米Agniluxを買収し、13年7月にはディスプレー用の半導体を製造する台湾のHimax Displayの株式6.3%を取得したことを明らかにしている。米アップルはアイフォーンなどの自社製の端末に搭載しているマイクロプロセッサーを自社で製造している。15年12月にはシリコンバレーにある半導体製造ラインを1820万ドルで取得したと言われている。

逆の例もある。例えば米インテルはソフトウエアやクラウド関連の企業を次々と買収している。買収したのは、セキュリティーソフトの米マカフィーや機器制御ソフトの米Wind River Systems、自然言語処理ソフトのスペインIndisysだ。インテルはすでにソフトやサービスを扱う組織を独立した事業部としている。インテルはソフトやサービスから2015年に22億ドルの売り上げを稼いでいる。

インテルの狙いのひとつは半導体を購入している装置メーカーのニーズに応えることだ。半導体上で作動するソフトを自分たちが作ることを通じて、半導体製品のみで実現できない付加価値を実現することが可能になる。それによって、半導体事業の利益率を高める。

かつて日本の電機メーカーは自社製品の機能を高めるために自社で半導体を開発・製造していた。それと似たようなことが今のシリコンバレーで起きているようにみえる。

[日経産業新聞2016年1月26日付]

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