客を呼ぶ低コストアプリ 達成感の刺激がコツ (村山らむね)

2016/1/24 12:00
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もはや集客にアプリを考えない店舗はないだろう。今年は、情報提供において「スマホファースト」から「スマホオンリー」といえるくらい、スマホシフトの傾向が明確になる。

「いきなり! ステーキ」のアプリは割引クーポンを配信せずに会員数を伸ばしている

「いきなり! ステーキ」のアプリは割引クーポンを配信せずに会員数を伸ばしている

ただ、アプリは開発コストが高い割に利用率が低く、使い続けてもらえるのが非常に難しい。ついついクーポンや特典を乱発して、原価率を押し上げてしまう。割引や特典のインフレはすぐにユーザーに飽きられる。

こうした中で、注目されるのがペッパーフードサービスが手掛ける「いきなり! ステーキ」のアプリだ。肉マイレージという肉の重さを記録するカードを2014年7月からスタート。このアプリではマイレージ管理が簡単にできる。肉の重さにしたのは、同店の顧客が従来の肉好きとは異なる層だったからだ。糖質制限ダイエットなどで体を作ることにストイックな客が多く、肉を食べたことがある種の達成感となっている。女性客の割合も3割と多い。

利用して驚いたのは肉マイレージカードが有料だという点。これはとても大きな意味を持つ。通常、このようなカードは無料で作れる場合がほとんどだ。100円と安価ではありながらも、有料にすることで客の当事者意識を育てることに成功している。他のカードよりも明らかに大切にする。

現在、肉マイレージカード会員は約20万人。そのうち3キログラムに達したゴールド会員が3万人、20キログラムに達したプラチナ会員は1000人。レベルに応じたドリンクサービスがあるが、かなり投資しないとサービスは受けられないので、決して特典の安売りではない。

アプリは約2万5000人がダウンロードしている。「総合」「月間」「1度に食べた量」のランキングは見るだけでも面白いが、ランキング上位者の達成感や充実感は計り知れないだろう。

実はペッパーフードサービスはこのアプリをかなりの廉価で開発している。ビートレンド(東京・港)の顧客情報管理(CRM)サービスを利用しており、同社のクラウドサービスの基本料金(1ユーザーあたり年間15円程度)に、アプリの開発と運用費が含まれている。

アプリの開発に多額のお金をかけず、割引クーポンも出さず、「おいしい肉を量り売りで、立ち食いで少しでも早く安く」というコンセプトがぶれることがない。このことが、顧客の信頼を得ているようだ。

 むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

サービスを支援するビートレンドは、他にも多くの飲食店向けアプリ開発を手がけている。例えばピザチェーンのシェーキーズでは、店舗内の音波を利用した来店管理システムを採用している。それまでレジで会計をする人にしかつけられなかった来店ポイントを、グループでの来客者全員につけている。仲間で行く楽しさをアプリによって後押ししている。

アプリ開発競争が過熱し、過剰な機能を盛り込んだアプリを、多大なコストをかけて開発した企業も多いだろう。しかし、基礎的なアプリを相手先のユーザーの価値に合わせて提供してくれる会社も増えている。数年前と違って全てを自社で開発しなくても、クラウドサービスを使って顧客が満足できる仕組みを安価に実現することができるようになっている。

アプリに重要なのはいきなり! ステーキやシェーキーズのように自社のサービスの肝となる部分は何かを見定めた上で、顧客に価値を提供すること。コストではなく、愛情をかけることだ。

(通販コンサルタント)

〔日経MJ2016年1月22日付〕

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