春秋

2016/1/14 3:30
保存
共有
印刷
その他

昨年末から各地で観光バスの火災が相次いでいる。乗客がいなかったり、うまく避難できたりでけが人こそ出ていないが、ことは深刻だ。東京・池袋では路上に停車していたバスが激しく炎上し、骨組みだけを残して屋根が焼け落ちた。出火原因ははっきりしていない。

▼ニュースの映像を見て、36年前に東京で起きた悲劇を思い出した方もおられるのではないだろうか。新宿駅西口で男がバスの車内に火を投げ入れ、ナイターを観戦した帰りに乗っていた親子ら6人が死亡している。ゲームの様子を興奮気味に父親に話しかけたであろう子どものエピソードなども伝わり、人々の涙を誘った。

▼バス火災の背景として、車両の老朽化が指摘されている。業界の競争が激しくなって、更新が滞りがちなのだという。外国人観光客の対応に忙しく、点検や整備がおろそかになっているのでは、との見方もある。当たり前のことだけれど、観光旅行だって安全第一である。「命懸けの脱出劇」といった思い出はごめん被る。

▼観光地に並んだバスから制服姿の学生たちが降りて来るのを見れば、もう戻れないころの懐かしい記憶がよみがえる。爆買いには面食らうが、銀座の店に横付けされたバスの窓からのぞく底抜けに明るい表情は、こちらをも愉快にさせる。観光バスはいつまでも、楽しい会話と笑顔にあふれた憧れの乗り物であってほしい。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]