トップ > 社説・春秋 > 記事

社説

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

受け入れ拡大へ向け総合戦略を

2016/1/10 3:30
共有
保存
印刷
その他

 少子高齢化が進む日本が今後も活力を維持していくうえで欠かせないのが、外国人をどう受けいれていくかの議論だ。

 日本の生産年齢人口(15~64歳)は2035年までの20年で約17%減る見通し。すでに様々な分野で人材不足が顕在化しているが、これが一層深刻になるだろう。

人手不足は一層深刻に

 一方、世界では有能な人材の獲得競争が加速している。女性や高齢者の働く機会を増やすのは重要だが、同時に外国人にもっと日本で活躍してもらう必要がある。

 にもかかわらず、これまで政治も社会もこの問題に及び腰の対応ですませてきた。どんな人材を求めるか。日本で働く外国人が社会に溶け込める仕組みをどうつくるか。受け入れの拡大へ向けて新たな総合戦略を練るべきときにきている。

 外国人受け入れの議論を停滞させているのが「移民」に賛成か反対かの不毛な二元論だ。

 日本語の「移民」は、外国人がすぐに永住権などを取得することと理解されがちだが、現実にはどの国でも様々な手続きや条件を踏まえて資格を与える。そのやり方を前向きに議論すべきだが、政府が「移民政策をとらない」としていることもあって話が進まない。

 「専門的・技術的分野」の外国人は受け入れるが、「単純労働者」などは受け入れないとの二分論も限界に来ている。何をもって専門、技術的というのか区別が難しいうえ、この区分法のままで日本に必要な人材が確保できるのかという厳しい現実に直面している。

 外国人受け入れのあり方を考えるにあたって、政府が自らはめてきた制約をいったん取り除き、これからの日本にふさわしい仕組みを一から検討し直す必要がある。

 まずは、政府が積極的に受け入れるとしている、専門能力を持つ人材の受け入れを加速させることだ。政府は高度人材を優遇するポイント制を導入したが、利用者は思うほど増えていない。

 日本は高度人材の受け入れ競争でシンガポールなどに比べて大きく出遅れており、より魅力的な仕組みで優秀な人材を引き入れる必要がある。永住許可の申請条件の緩和や起業家向けの在留資格を特別につくるなど外へ向かって積極的なアピールをしていくべきだ。

 もちろん、在留資格だけでなく、外国人がビジネスや研究、生活をしやすい環境を整備することも急務である。

 正面から向き合うべきなのは、労働力不足に対応した外国人受け入れの制度設計だ。厚生労働省の推計では、介護人材は2025年には37万人不足するという。

 介護に限らず看護、農業、製造業から自動車整備士まで幅広い分野で人手不足が深刻になる恐れがある。機械などで代替できる部分もあるがそれだけでは不十分だ。

 これまで人手不足に事実上対応してきたのが技能実習制度や経済連携協定(EPA)に基づく人の受け入れだ。目的は「国際貢献」だが、受け入れ側にとっては人の確保が最大の狙いだ。技能実習の一部では不当な処遇や人権侵害が国際問題になっているが、背景には建前と現実のかい離がある。

新たな就労の仕組みも

 この矛盾を放置するのはもう限界だ。構造的に人が足りない分野について、一定の職務能力を持つ人材を受け入れる新たな就労の仕組みを検討すべきではないか。

 ドイツ、英国などは、人手不足が著しい業種や職種を指定し、国内で募集しても充足できない場合に外国人を雇用する仕組みを取る。受け入れ決定にあたって幅広く経済や雇用への影響を分析し、政府に助言する独立機関を設置している国もある。

 日本国際交流センターは、二国間協定に基づいて、出身国で一定の公教育を受けた者を対象に新たな在留資格「特定技能」を付与する仕組みを提言している。日本語や技能のレベルが上がった人は日本に残るチャンスを与え、技能向上や日本に溶け込む努力を促す。

 もちろん外国人の処遇は日本人と均等にし、賃金が全体として下がらないようにする必要がある。

 外国人の受け入れ拡大に抵抗を持つ人も多い。だが外国人に頼らないとやっていけない業種や職種が増えているのはまぎれもない事実だ。それに目をつぶるよりも、現実に即した就労の仕組みを考えていくほうが賢明ではないか。

社説をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報