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春秋

これまでのやり方は根本的に変えなければダメだ。自分が経営を引き受ければ、面目を一新して近代的な経営にしてみせる――。三井呉服店(後の三越)の幹部だった日比翁助がこのように語ったのは、明治30年代半ばだったらしい(山口昌男「『敗者』の精神史」)。

▼その頃、政府との深いつながりをバックに急速に事業を拡大していた三井財閥のなかで、呉服店は半ば「お荷物」となっていた。そのため三井から切り離して分離独立させる考えが浮上していたという。自分が引き受ければ、と日比が口にしたのは、そんな事情があったからだ。そして明治37年12月20日、三越が誕生した。

▼ちょうど111年前のきょうに当たる。専務取締役という肩書ながら経営の全権をになった日比は、さっそく改革に着手した。よく知られているのは、翌年早々に主要紙に掲載した1ページ広告だ。「米国に行はるるデパートメント・ストーアの一部を実現」する、との決意表明。日本の小売業で初めてのデパート宣言だった。

▼日比については、サムライの気構えでビジネスに成功した「士魂商才」の人物、といった評価をよく目にする。と同時に、ケインズのいう「アニマル・スピリッツ」の持ち主だったことが、冒頭の言葉からはうかがえる。冷徹な計算よりむしろ、わき上がる楽観に基づく決意。今の日本にこそ求められる精神かもしれない。

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