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低炭素社会へ変革を促すパリ協定

地球温暖化の抑止を目指す国際協力の新たな仕組みである。パリで開かれた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、京都議定書に代わる「パリ協定」が採択された。

協定には温暖化ガスの二大排出国である中国と米国を含む196カ国・地域が加わる。それぞれの能力に応じて温暖化ガス排出削減の責務を担う。先進国だけが削減義務を負っている京都議定書に比べ、対策の実効性と公平性の面で大きな前進だといえる。

温暖化対策は事業機会

地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満、できれば1.5度までに抑える、という目標をパリ協定は掲げた。南極の氷床融解など後戻りできない環境の変化を防ぐためだ。

協定により、世界は化石燃料の使用に強い制約を受けることになる。大切なのは、エネルギーの効率的な利用や自然エネルギーの活用で二酸化炭素(CO2)の排出を減らす「低炭素社会」の実現を着実に進めることだ。

様々なレベルで変化はすでに始まっている。インド政府は高効率の発光ダイオード(LED)照明を国民に低価格で提供し「照明革命」を進めている。モディ首相はパリで太陽光発電の拡大に1兆ドルを投じるとも発表した。

米カリフォルニア州は1人当たりのCO2排出量が約12トンと日本(約10トン)より多いが、同州政府は電気自動車などの普及によって2050年までに2トンに減らす目標を掲げている。

大手保険会社の独アリアンツは、化石燃料の多消費型産業から資金を引き上げ再生エネルギーなどへ振り向ける方針だ。

欧米の投資家や年金基金はパリ協定を投資機会とみる。低炭素社会を築くには、交通や電力供給網などのインフラからエネルギー効率の高いものに切り替えていく必要がある。そのために必要な資金は30年までに少なくとも約90兆ドルと試算されている。

いうまでもなく、課題は多い。パリ協定は「全員参加」を優先して参加国を拘束する力を弱めた。削減目標を定めたうえで国内対策につとめるよう義務付けるが、達成を強制はできない。

しかも目標は自主申告でよい。これまでに各国が示した対策では「2度未満」という目標を達成するのにも足りないのが現実だ。

そのため協定は5年ごとに各国の目標を見直し対策を強化する仕組みを盛り込んだ。世界全体の目標をトップダウンで決め、達成手段ではボトムアップの現実的な道を選んだわけだ。

この違いは将来、各国が互いに責任を押しつけ合う対立の火種になる恐れもある。協定の成否は、日本を含めて排出量の多い国々の削減努力にかかるだろう。今の技術だけでは足りず、さらなる技術革新も欠かせない。

1997年に京都議定書を採択した際、日本は議長国として世界を主導した。「京都」は米国の離脱などで実効性を失ったが、失敗ととらえる必要はない。パリ協定は「京都」の挑戦を踏まえて生まれたといえるからだ。そのことに日本人は誇りを持っていい。

多くの日本企業は環境保全を社会的な責任ととらえ温暖化対策にも誠実に取り組んできた。技術力を生かした地道な問題解決が日本企業の真骨頂であり、その姿勢は海外で評価されている。

弱者を襲う気候の異変

ただ自分の庭をきれいにすることは熱心でも、世界全体のありようを変えようとする発想には乏しいようにもみえる。

欧米企業は政府や非政府組織(NGO)と手を組み、低炭素社会への変革のルールづくりを主導しようとしている。温暖化の危機を事業拡大の好機と考えるからだ。温暖化は国境を超えた課題であり、迅速な対応も必要だ。欧米企業に学ぶべきことは多い。

すでに温暖化が原因と疑われる気象の異変や海面上昇が各地で起きている。まず打撃を受けるのは途上国の貧しい人々だ。温暖化は難民を生み格差を拡大する。成長と繁栄の妨げになる。

だれにとっても温暖化はひとごとではない。日本国民も一人ひとりがエネルギーのむだ遣いを避けるなど、生活スタイルの見直しをこれまで以上に求められる。

京都議定書採択の翌日、われわれは「世界にとっても、日本にとっても京都会議を新しい時代への一歩と位置づけることが求められる」と主張した。歴史的合意を受け、いま一度繰り返したい。パリでの合意を新しい時代への一歩としなければならない。

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