2019年1月24日(木)

日本経済再生に宿題残す税制大綱

2015/12/11 3:30
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自民、公明両党による2016年度税制改正大綱の内容がまとまった。法人税の減税などで経済成長を後押ししようとした点は評価できるが、来年の参院選を意識して素通りした課題も多い。抜本改正にはほど遠い中身だ。

柱のひとつは法人減税を中心とする経済活性化策だ。

成長をけん引し、雇用や賃金、配当を通じて家計にも恩恵を与えるのは企業だ。与党が一段の法人減税を決めたのは正しい。

法人税率20%台に前進

現在の32.11%の法人実効税率は16年度に29.97%に下がる。財源は、赤字企業にも負担を求める外形標準課税の拡大などで賄う。

日本の法人実効税率はひとまず米国やフランスを下回り、ドイツと同水準まで下がる。それでも経済のグローバル化が進むなか、法人減税で企業を誘致しようという各国の競争は激しい。

英国は20%の税率をさらに18%に引き下げる方針だ。アジアでも中国や韓国は日本より低い。

日本も将来はさらに課税対象を広げたり、固定資産税や住民税を含めた税体系全般の見直しをしたりして、25%程度まで下げる方向で検討する必要がある。

ほかの活性化策では、中小企業が新たに購入する機械などにかける固定資産税を軽くする。17年4月の自動車取得税の廃止と同時に導入する新税は、税収規模を取得税より抑えて実質減税とする。

農家が農地中間管理機構を通じて企業などに農地を貸すと固定資産税を減らす一方で、耕作放棄地にかかる税は引き上げる。

環太平洋経済連携協定(TPP)発効をにらみ、農地を集約して農業の生産性を高める方策は急務だ。硬軟両様で税制面から後押しする対応は妥当だ。

もうひとつの柱は、消費税への軽減税率の導入だ。消費税率は17年4月に8%から10%に上がるものの、生鮮食品や加工食品などは8%に据え置かれる。

対象品目を生鮮食品から広げたのは、わかりやすさを優先し、増税の負担感を減らすという狙いがあるだろう。半面、膨らむ社会保障費を賄うべき歳入が見込みより減ることになる。この問題にどう対応するかが今後問われよう。

政府は軽減税率の対象品目と対象外の品目について、事業者や消費者向けの周知を徹底し、導入前後の混乱をできるだけ小さくするよう全力を挙げてほしい。

事業者の経理方式では課題が残る。いまの請求書に近い簡易な方式を使う経過期間を設けたうえで、品目ごとに税率や税額を記すインボイス(税額票)の発行を21年度から義務づけるという。

納めるべき消費税が事業者の手元に残ってしまう「益税」を小さくするため、インボイスを義務づけるのは当然だ。

しかし、売上高1千万円以下の企業は納税を免除する制度が残る。売上高5千万円以下の企業にも「みなし納税」のしくみが採用され、益税が膨らむおそれがある。税の公平性の観点からこうした制度は将来廃止すべきだ。

今回の税制改正の大きな問題は、与党が軽減税率の協議に追われた結果、長年手つかずのままになっていた「岩盤税制」に踏み込まなかったことだ。

所得税含め抜本改革を

所得税では、専業主婦らがいる世帯の所得税を軽くする配偶者控除の見直しを先送りした。

パートで働く主婦らが年収を103万円の範囲内におさえようと就業調整する例が多い。その結果、保育所や小売店などの現場では人手不足に拍車をかけているとの声が根強い。

たとえば、妻の年収に関係なく夫婦の所得から一定額の控除を認める「夫婦控除」をつくる案がある。ほかの案も含めて誰でもフルタイムで働きやすくする税制に知恵を絞るときだ。

現役世代と比べて年金受給者を優遇している公的年金等控除の見直しも避けた。世代間の給付と負担の不均衡に一定の歯止めをかけるため、給与所得控除にあわせて縮減すべきだった。

人口減に直面している日本では、働く意欲のある女性や高齢者に活躍してもらい、潜在成長力を底上げすることが期待されている。今回の税制改正はそれに応えていない。

日本経済の最大の課題は経済成長と財政健全化の両立だ。法人減税と消費増税はそのための手段だが、それだけでは不十分だ。

社会保障の給付と負担の見直しと一体で、所得税を含む税制の抜本改革に取り組むという宿題を忘れてはならない。

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