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アマゾンが1時間内で配送 ネット通販、物流競争過熱

(藤元健太郎)

アマゾンがいよいよ日本でも「プライム・ナウ」サービスを始めた。有料のプライム会員であれば約1万8000品目から選んで購入でき、2時間以内に商品が届く。さらに890円の追加料金を払うと1時間以内に配送してもらえる。これまでのネット通販の概念を大きく変えるサービスだ。

利用者はスマホで配送員の位置を確認することができる

筆者もパスタなどを頼んでみた。アプリでいつ倉庫を出発し、今どこにいて、もうすぐ我が家に到着すると確認できるのは便利だった。そろそろ届くから家に戻ろうとか、玄関に出てもいいように着替えておこうと考える余裕ができ、特に女性には歓迎されるだろう。

ちなみに、アプリの地図から倉庫が等々力(東京都世田谷区)辺りにあることがわかる。現在のサービス対象エリアは、この倉庫周辺の都内8区が対象だ。サービス時間は午前6時から午前0時まで(1時間配送の場合は午前1時まで)。午前6時に朝食用の食材を頼めば、午前8時には間に合う。夜中の11時半に子供の紙おむつが足りなくなっても午前1時までに届くのだ。

一方、対抗する楽天はプライム・ナウに先駆けて今年8月から「楽びん!」というサービスを都内4区で始めている。こちらはなんと24時間対応で最短20分で届ける。送料は390円からで、2500円以上ならば無料だ。楽天市場で人気の450品目が対象。商品数はアマゾンよりもだいぶ少ないが、顧客の30%がリピートしており、固定客が増え始めている。

楽天の社長室新サービス開発室シニアマネージャーの中西勝也氏は「3カ月で様々なニーズが見えてきた」という。スピードという価値があっても、やはり女性客らは価格に厳しいという。「『食品の品ぞろえを増やしてほしい』という要望が強いため、対応できるように検討中だ」と語る。

セブン&アイ・ホールディングスが11月に本格的に始めたオムニセブンも午前7時までの注文はその日の夜には近くのコンビニで受け取れる。ヨドバシカメラは自社の通販サイトで、注文から6時間程度での配送を実現している。

このように、より短時間で配送する物流競争は激化する一方だ。「プライム・ナウ」や「楽びん!」で1~2時間以内に商品が手に入るようになれば、これまで「今日中に欲しければリアル店舗」「明日でもよければネットで注文」とすみ分けされてきた消費行動が変わっていくだろう。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

今後物流の仕組みが改善され、短時間配送の対象となる品ぞろえが拡充していけば、コンビニエンスストアの牙城が揺らぎかねない。顧客が一番望む方法で、欲しい商品をできるだけ早く手に入れる。オムニチャネルの戦いは業態を越えてますます激化しそうだ。

一方、短時間配送が広がれば、物流が増えて環境負荷が高まることも懸念される。しかし「楽びん!」では利便性を高めた結果、再配達がほぼゼロという結果が出ている。現在、再配達は全体の2割を占めるといわれているが、これを削減できることでむしろ、環境負荷の低減につながる可能性がある。

さらに短時間配送が可能になることで、賞味期限が切れそうな商品を価格を下げて効率的にさばける可能性もある。社会問題になっている廃棄食材の削減につながるかもしれないのだ。こう考えると、短時間の物流はある意味、持続可能な次世代都市スマートシティーの一部ともいえる。

今後は「プライム・ナウ」や「楽びん!」の配送エリアとそれ以外で、家賃相場に差が出る時代も来るかもしれない。

(D4DR社長)

〔日経MJ2015年12月4日付〕

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