2019年8月26日(月)

時代遅れのメールに代わる 「Slack」の使い勝手
林 信行(ITジャーナリスト/コンサルタント)

2015/11/27 12:00
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仕事における道具というものはバカにできない。ほんの20年ほど前、それまで郵便やファクスで行っていた仕事のやり取りが徐々に電子メールに変わったことでコミュニケーションの効率が劇的に向上した。

今では、電子メールも時代遅れの足かせになりつつある。メールは一通一通の情報量が多くなってしまう。目的の情報が見つけにくかったり、同姓や同名あるいは似た名前の人に誤送信してしまったりするリスクも高い。ちょっとした用件でも上司などに同報する人が多く、受信メール数が際限なく増えてしまう。

共同作業のための効率的なツールを探す流れは10年以上前からある。あのツイッターも「オデオ」というサービスを開発していたエンジニアらが社内コミュニケーションのために開発したものだ。使っていくうちにオデオよりツイッターの方がビジネスチャンスが大きそうだと事業転換して今に至っている。

そうした中、それほどエンジニア的な知識がなくても使いやすいサービスが出始めている。その代表が「Slack(スラック)」だ。

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

使い方は既存のメッセージ交換アプリとほぼ同じ。それでいて余計な挨拶などを入れる必要もなく、ひたすら本題を話し続けられる。パソコンのWebブラウザに加え、アイフォーンやアイパッド、アンドロイド用のアプリもある。参加者が自分にとって最も楽な方法で参加できるのも魅力だ。

プロジェクトごとに関係者が参加する仮想の部屋を作り、そこでやり取りをする。書類の送信も可能だ。送信した書類はその部屋に保管される。書類に含まれるキーワードまで検索できるので、たくさん書類を保管しておいて使うのにも便利だ。セリフを「To-Doリスト(備忘録)」に簡単に変換する機能もある。例えば相手から「資料を買ってもらえますか?」と言われたら、そのセリフに印をつけると、それが自分の「やること一覧」に追加されるのだ。

このように共同作業におけるコミュニケーションと実作業を円滑につなぐ小技などが豊富に用意されている。日本でもエンジニアリングに近い領域では愛用者が多い。

コンサルティングなどを行うtakram design engineering(タクラム・デザイン・エンジニアリング)も愛用する企業の1つだ。田川欣哉代表は「意思疎通も含めたクライアントとのやり取りの効率や質が大幅に変わるので、どんどんSlackに移行している」と言う。場合によってはあらかじめSlackが使えるように設定したパソコンをクライアント側の担当者に貸し出すこともあるという。我々が今更、郵便やファクスに戻れないのと一緒で、やり取りを電子メールからSlackに移行した方が仕事の効率がいいからだろう。

Slackは共同作業効率化の唯一のツールではない。同様のツールは多数ある。ただ、こうしたツールの多くは、日本語が使えるにも関わらず表示が英語なこともあり、日本のビジネスの現場ではあまり広がっていない。日本企業の多くは使う道具が古くてシリコンバレー企業よりはるかに遅いペースで仕事をしている。

日本の企業はIT(情報技術)が苦手な人が多く、新しい道具への順応を嫌う人も多い。だが、電子メールへの移行はできたのだし、次の道具への移行だってできるはず。習得までは少し大変だが、その後の仕事の進み方のスピードを考えれば、払う価値のある対価だろう。

[日経産業新聞2015年11月24日付]

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